2023年は「最悪の年」だったのか?/ZOZO直前 松山英樹インタビュー
最終戦連続出場が途絶えて考えたこと
かくして松山はポイントランク50位を確保した。ただし、目標にしていた最終戦「ツアー選手権」10年連続出場はならなかった。
継続中の選手では最長の9年連続という金字塔については、「まあ、ビクトル(・ホブラン/ノルウェー)やジョン(・ラーム/スペイン)といった、今の上位選手はみんな10年以上続けそうな人たちばかりなので、(将来的に)すごい記録になるかは分からない」とクールに向き合う。このハードルはずっと、自分との闘いだった。
「ツアチャン(ツアーチャンピオンシップ=ツアー選手権)に行くことは、他人からの期待ではなく、自分にかけていたプレッシャー。21年のマスターズまで勝てない4年近くの間で、自分を評価できるのはそこしかなかった。実は今年は早い段階で『続けさせることができるんだろうか。今年は無理かもしれない』という意識があったんです。6月のトラベラーズ選手権で、トップ10に入れそうな雰囲気があったのに、入れなかった(13位)。その時に(最終戦に)『行けないかもしれない』と。その後の全英もチャンスがありそうで13位。トップ10に入ること自体を厳しく感じてしまった」
20代前半で米国に渡ってから、いつも「最低限」の目標にしてきたラインを越えられなかったが、もちろんこれでキャリアが終わるわけではない。思い浮かべるのは、ひとりのアスリートの存在。
「もちろん、続けていたことが途絶えたのはショックです。ただ、僕は進出が厳しそうだと感じてから、『途絶えてからが勝負だ』と思っていた。頭に浮かんだのが、イチローさんの記録のこと。イチローさんはメジャー(MLB)での200本安打が10年連続で途切れた(2001~2010年)。それからは一度も200本に届かなかった。もちろん野球とゴルフは、年齢的な面、チームの移籍などゴルフとは全く違う。それでもイチローさんは記録が途切れても、ずっと上を目指したはず。『残念』と嘆くよりも次に行くこと。結構大変だけれど、途切れたところからもう一回、ツアチャンに行きたい。これから何回行って、どう続けられるかが大事だと思う」
改めて、この2023年は松山にとって「キャリア最悪」の一年だろうか。
「うーん、2018年の方が悪かったような気がするんですよね。18年はトップ10が4回で、今年は2回。でも、5年前の方がダメだったように思えて。今年は予選落ちも4回して、ポイントランクも50位(18年は予選落ち2回/ポイントランク13位)。数字上は確かに一番悪い。けれど、感覚的には18年の方が悪かった。勝ちたいという欲ばかりあって、全くうまくいかず、前のシーズン(3勝した2016―17年)とのギャップにも苦しめられた。自分のスイングも分からなくなっていた。今年は予選落ちも多いし、調子が悪い時間も長いけれど、当時よりも心には“来ていない”」
2カ月ぶり実戦は「ZOZO」
リスタートに選んだ試合は「ZOZO」。2大会ぶりの優勝がかかる。期待するのは何も大ギャラリーだけではない。自らも、そう願う。
「『勝ちたい』という気持ちが第一にある。世界ランキングも下がるばかりだから、ポイントを稼がないといけない。年末の50位以内…を必ずしも目指しているわけではないけれど、勝てば世界ランキングは上がる。もちろん、そんな単純な話ではないし、久しぶりの試合だから、どういう自分がいるかも分からない。ただ、幸いにも(シーズン中に感じた)ポイントランクはひとまず関係ないから、気楽に行けるところはある」
アコーディア・ゴルフ習志野CCは、米国の広大なコースとは趣が異なり、テクニックが試されるという。
「PGAツアーのコースの中ではトリッキーというか、球を曲げられないとダメ、イメージを出していかなきゃ勝負にならないですよね。真っすぐのホールはほぼない。少しだけ球を動かす、高い球も低い球も必要になる」
2年前、松山は「ファンの皆さんの応援のおかげで、『頑張れ』の声で勝てた」と言った。
「その気持ちは変わらない。2年前は会場入りした時、ゴルフの状態は最悪だった。けれど、徐々にコンディションを上げられて、応援が力になって優勝できた。まず応援が力になるところまで自分を持っていかなきゃいけない。初日に100%な状態に持っていくことは無理だとしても、30%、40%…というところには。去年は0%以下くらいのレベルだった。初日の朝までもがきたくないけれど、ギリギリまで戦える基準までには持っていきたい」
昨年1月の「ソニーオープンinハワイ」で通算8勝目を手にしてから1年9カ月が経った。
「次に勝ったら9勝目。それに僕は30代に入ってから勝っていない。今年のZOZOはいろんな意味で大きい。でもね、そんな簡単に勝てるもんじゃないって分かっているから、一つひとつ、時間がある限り不安な部分をつぶしていきたいなと思っています」
アジア勢の最多勝利を更新する、PGAツアー9勝目を目指すラウンド。初日はリッキー・ファウラー、キーガン・ブラッドリーとの組で午前10時46分にティオフする。