遥かなるオーガスタ 今週の“一枚”:マスターズ(前編)
2022/04/12 18:51
テレビカメラのレンズを通してしか見たことがなかったマスターズ。地球の反対側で開かれるゴルフの祭典はいつも眠気との闘いだった。最新のカメラとマイクがゴルフファンのハートを踊らせ、矢継ぎ早に飛び込んでくる美しい光景が半分閉じかけていた瞼を不思議と軽くさせてくれる。これが花粉症との戦いがピークを過ぎた4月はじめの僕の恒例行事だった。
人類が新型のウイルスとの対峙によって、身近だった海外は以前より遥か遠くになってしまった。そんななか幸運にも今年のマスターズを初めて撮影させてもらえることになった。オファーをもらった日から緊張気味の僕は、いつもの撮影より多めのカメラとワクチン接種証明書、PCR検査の陰性証明書と普段は控えているレトルト食品をつめこんで飛行機に乗った。
丸一日かけてようやくたどり着いたジョージア州オーガスタにあるオーガスタナショナルゴルフクラブ。マグノリアレーン、クロウズネスト、バトラーズキャビン。テレビで見ていた景色が目の前に広がる。言葉を失った。
そのコースの脇にあるのが僕たちメディアの拠点、プレスビルだ。さながら高級ホテルのような門構に圧倒され、巨大なプレスルームにある映画館のスクリーンのような窓ガラスの向こう側、整えられた緑の芝と黄色いフラッグが僕をさらに煽ってくる。今すぐ写真を撮りたい。欲張って多めに持ってきたスチールカメラとレンズを抱えて、まだトーナメントが始まってもいないコースへ足早に向かった。(フォトグラファー・今井暖)