初勝利から6戦4勝 シェフラーのオーガスタの長い朝と4パット締め
◇メジャー第1戦◇マスターズ 最終日(10日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72)
「今朝、僕は赤ん坊のように泣いたんだ。ストレスでいっぱいになって、どうすればいいかわからなくなった。準備ができていない、こんな時のための準備ができていないって」。2月初旬から7週(出場5試合)で3勝し、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界ランク1位に到達したスコッティ・シェフラーにも、グリーンジャケットの重圧はのしかかった。
25歳の心を鎮めたのは、隣のメレディス夫人。「準備ができていない? 人生で何がベストか分かっているの? 導きは神様が、主がしてくれる」。この2日間、痛かった胃に彼女が作ってくれた朝食を詰め込むと、鼓動が静かになってきた。「長い朝だった」。トレーニングをはじめコーチと練習を始めたころにはもう落ち着き払っていた。
最終組でマッチアップしたキャメロン・スミス(オーストラリア)との差はスタート時に3打。シェフラーは前半2番(パー5)までにパーを並べ、1打差に迫られたが、3番でグリーン左手前からチップインバーディを決め、再び差を広げた。
「サンデーバックナインまでは、まだ何も始まらないと聞いてきた」。これまでのPGAツアーで、首位で最終ラウンドを迎えた2試合は逆転負け。ただそれは、未勝利だった昨年までのことだ。「僕は普段、あまりリーダーボードを見ない。良いショットを打つこと、アグレッシブでいることを心がけている」。積極性を失わず、後半14番からの2連続バーディで再び大差を築いた。
18番を迎える前に、「64」の追い上げで2位に浮上してきたロリー・マキロイ(北アイルランド)も気にならない5打差のリード。「17番でちょっと緩んだかもしれない」と、最終ホールでは4パットのダブルボギー。パーパットから1m前後の距離を2度外した後、何とか6打目を沈めて「71」。「ずっと応援してくれたファンに(パットを繰り返して)頭を下げたんだ」と笑う。通算10アンダーとしてキャディのテッド・スコット氏と抱き合った。
「マスターズだから。この試合に出るチャンスをずっと夢見てきた。初めて招待状が届いたときには泣けてきた」。テキサス大時代の2020年大会からわずかな期間で、それは勝利の涙に変わった。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)