石川遼は“ZOZO”で2年ぶりの米ツアー「現在地を知りたい」
◇日米ツアー共催◇ZOZOチャンピオンシップ 事前情報◇アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ◇7041yd(パー70)
心待ちにしていたゲームを前に、最後に意地を見せられた。福岡県の古賀ゴルフ・クラブで行われた前週の国内メジャー第3戦「日本オープン」。石川遼は2日目までに8オーバーとした後、週末に挽回。予選通過時の53位から12位に順位を上げてフィニッシュした。24日に開幕する日本初開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」に向け、態勢を整えた。
2017年秋、石川は5年間戦った米ツアーの出場権を失った。レギュラーツアーは8月の「ウィンダム選手権」、そして10月の下部ツアー入れ替え戦「ウェブドットコムツアー選手権」がいま残る最後の出場記録。その履歴は今週、2年ぶりに更新される。日本ツアーの賞金ランキング上位者の資格で大会に参戦。その心境はいま、真っ白に近い。
日本ツアー0勝に終わった昨シーズンを経て迎えた今季は「まさか賞金ランキング2位でZOZOに出られるとは…。開催が決まったときに(出場資格のひとつであるブリヂストンオープンまでの賞金ランク)7位をクリアできるかは半信半疑だった。入りたい思いはもちろんあったし、(周囲には)大丈夫でしょうと言われていたが、自分ではそうではなかった。自信を持ってシーズンインしたわけではなかった」という。淡い期待でしかなかった『ZOZO』への出場を勝ち取ったのは「ガムシャラにやってきた」日々の積み重ねによるものでしかない。「一打、一打というところから。本当は(今季初勝利の)日本プロの直前まで賞金シード(を確保できるかという問題)も頭にあった」と明かす。
技術的に突き詰めているのは「ドライバーとアイアンショット」に尽きる。「その2つは去年安定感がなく、振り返っても一番精彩を欠いていた。技術に行きつくまでに身体の問題、メンタルの問題もあった。ドライバーの悩みが多すぎて、アイアンショットがピンに5、6mに寄っていれば(自分のなかでは)“OK”にしていた。OBに行かないだけで満足していたり…」。未熟さを痛感したのは国内でというよりは、やはり海の向こうでの実体験から。「アジアでセルヒオ・ガルシア(スペイン)、シュバンカー・シャルマ(インド)と回っていると、自分のアイアンショットがピンから10mという場面でも、彼らは“ベタピン”、2mというところにつけている。ドライバーショットさえ良ければ日本で勝てたりしていたが、アイアンも…と気づいて、明確な目標を立てて歩んできた」
心の底から憧れ、失望感を味わったPGAツアー。日本にカムバックした途端に国内開催が決まったのは、何かの縁かもしれない。「夢みたいな気持ちです。マレーシア、中国、韓国でもやって、日本でやるのは一段と盛り上がる気がしている。今回、タイガー・ウッズが出るのはすごく大きな違い。マスターズを勝って、復活したタイミングで、初めて日本で開催されるのは素晴らしい巡り合わせ。話を現実にしてくれた皆さんに感謝したい」
観戦チケットは1カ月以上前に完売となり、多くの人が世界最高峰のプレーをその目に焼きつけようとアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブに足を運ぶ。石川がひとりの“ファン”として目を凝らしたいと思うのは、くしくも本人が取り組んでいる課題とリンクする。
「注目はドライバー、アイアンだと思う。300ydをキャリーで超える選手の弾道を見られる。PGAツアーでは飛ばない選手ほど、ピンを狙ってくるアイアンの精度が高い。飛ぶ選手は短いクラブでデッドにピンを狙ってくる。アイアンが悪い選手は、ほぼいない。そういう選手たちが7000yd(7041yd、パー70)というコースでどうプレーするかは見もの」。日本で初めてプレーする選手も多いが、レベルの高い選手が適応能力にも優れていることは言うまでもない。「(彼らは)一度コースを回れば、一番良い攻め方が頭を回転させて分かるはず。『ここはドライバーでラフに入れても大丈夫』『ここは170、180yd残ってもフェアウェイに打とう』と、メリハリをつけて回ると思う」
ウッズ、ロリー・マキロイ(北アイルランド)、そして松山英樹…。かつて主戦場を同じにしたスーパースターたちとの再会は喜ばしい。「やっぱりヒデキですかね。マキロイも、覚えてくれているか分からないくらい久しぶり。みんなに会えるのは楽しみだし、一緒に回ってみたい気持ちもある」。ただ、“習志野”は昔を懐かしむだけの場所ではない。石川は「ワクワクしてやりたいというのもあるが、緊張もあります。不安もあります」と言った。
「一番、知りたいのは自分の現在地」。9月に28歳になった。もう一度、世界を相手に戦いたい思いがある。母国で過ごしてきたこの2年間の選択と蓄積は胸を張れるものだったか。歩みがどれほどのものか知るために、今大会は絶好の機会になる。「そのために縮こまってプレーするか、思い切って“当たって砕けろ”という精神で自分の全力を出し切るか。どちらが(自分の位置が)分かるかというと、必ず後者だと思う。そんなに目標は立てていない。それを先に言うと、そこに合わせていきそうで。知りたいのは自分がどのレベルにいるか、だから。誰と一緒にプレーしても、自分のためになる4日間になるのではと思います」