2015年 全米女子オープン

梅ちゃんリポート(3)気持ちの切り替え/全米女子オープン

2015/07/10 12:28
気持ちの切り替えで、ボギーのあとにバーディ奪取。鈴木愛の進化を感じた!

サスペンデッドで何人かの選手がホールアウトできませんでしたが、鈴木愛選手は初日、イーブンパーの暫定18位タイでホールアウト。まだまだ初日とはいえ、メジャー初出場でのこのスタートは素晴らしいのではないでしょうか。

嫌な流れでスコアを落とした7番と14番。でも、どちらもその直後にバーディを奪っているんです。それらはね、今の鈴木選手にとっては“ただの”バーディではなかったんですよ。

昨年、初めてバッグを担がせていただいたとき、その才能には驚かされました。ショットの精度はもちろん、アプローチ、パターのショートゲームは同世代の中では群を抜いていました。

優勝争いになっても全く緊張しないし、逆にプレッシャーが掛かれば掛かるほど、どんどん実力を発揮するタイプのプレーヤー。ただね。鈴木選手は些細なミスを許せなくて、そのせいで自分の気持ちを抑えられなくなり、簡単にスコアを落としてしまうことがよくあったんです。

何回か担がせてもらう中で、ある日鈴木選手からこういうメールをもらいました。

「私に足りない部分は何でしょうか?」

もちろん、僕は思うがままに答えましたよ。2人でフェアウェイを歩きながらもその話はよくしました。気持ちの切り替えさえできれば、鈴木選手は最強になりえると。

それを実践したのが、先日行われた「アース・モンダミンカップ」でした。その時点で、この「全米女子オープン」出場が決まっていたこともあって、鈴木選手を指導する南コーチとともに3人で話し合って決めたんです。「1度、結果は気にせず、気持ちをできるだけフラットにしたまま最後までやってみようよ!」って。

鈴木選手は4日間それを実践し、生まれ変わりました。このメジャーの大舞台では1度切れた気持ちは、ほぼ修復できません。気持ちが切れたら10オーバーなんて簡単に行く。そのためには変わらなきゃいけない必要があったんです。

これまでとは違い、僕は今回あの7番と14番のホールアウト後には何も言いませんでした。鈴木選手自らが、気持ちを切り替えてくれることを信じて。8番ホールと15番ホールのティグラウンドに立ったとき。鈴木選手が僕に見せてくれた表情は、いつもと変わらない会心の“愛スマイル”でしたよ。

良いスタートを切ったとはいえ、メジャーの本当の怖さを迎えるのはここからです。油断なんて一切しないけど、僕らは明日も笑顔でフェアウェイを歩きますから。

■ 梅原敦(うめはら・あつし)

1974年4月5日生まれ。41歳。京都府出身で学生時代は野球少年としてならし、専門学校卒業後に兵庫県内のゴルフ場に就職する。98年から2013年末まで、15年間にわたり藤田寛之の専属キャディとして活躍し、14年からはフリーに転身。男女ツアーを通じ、さまざまな選手のキャディとして選手をサポートし続けている。愛称は「梅ちゃん」。今年の全米女子オープンでは、鈴木愛選手のバッグを担ぐ。

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