2015年 全米女子オープン

梅ちゃんリポート(2)パーとの闘い/全米女子オープン

2015/07/09 11:10
初めてのメジャー大会でもひるまない!トップ10入りを目指す鈴木愛

「全米オープン」「全米女子オープン」の最大の特徴と言えば、深いラフと固いグリーンというイメージが強いですよね。でも、僕の中ではそれよりも、ティグラウンドの位置が日によって考えられないくらい変動することにいつも衝撃を受けるんです。

各ホールにはいくつかのティグラウンドが設けられていて、その日の天候や風向き、ピンポジションによって使用するティグラウンドが変わります。極端なときには、前の日のティグラウンドと100ヤード以上も違うティグラウンドが使用されることだってあるんですから。

宮里美香プロのキャディである加藤大幸君が、「全米(女子)オープンはいつも、18ホールではなく36ホールあると思ってコースチェックするんです」と言っている意味がよく分かりますよね。

急に使用するティグラウンドが変わると、使用する番手や景色が全く違ってくるため、スポット参戦する日本人選手のほとんどが、その変化に対応しきれない場面を今までたびたび見てきました。

だから、練習ラウンドの際に僕は鈴木愛選手に、できるだけいろんなティグラウンドから打つようにということだけを、口うるさく言ったんです。

ヤーデージ上は399ydの3番(パー4)。天候や風向きでティは変わる※撮影梅原敦

選手はイメージがすべてですから、そのイメージが全く出ないまま打たせることだけは避けたかったんです。

全米女子オープンはいよいよ明日から始まります。初出場で大活躍できるほど、この大舞台は甘くはありません。そんなことは重々承知で僕らは闘います。

「トップ10に入りたい!」と言う鈴木選手の目標にはもちろん全力で向かうけど、僕は鈴木選手にはこの大会を経験することで“パーを獲る喜び”を味わってほしいんです。

正直、今の日本ツアーの試合はどんどんバーディを獲っていかないと置いていかれるケースがほとんどです。逆にパーを積み重ねていくことがストレスになることだってある。

このホールでパーを取れば予選を通過するってときや、最終日の最終ホールでこのホールをパーで上がれば優勝、なんていう場面ぐらいなのかな。多くのプレッシャーと闘いながら必死でパーを獲りにいくのは。

でもね、ここではそれと同じ状況がスタート直後から18ホール続くんです。パーを取ることがこんなにも嬉しいんだってことを、鈴木選手は明日からたくさん経験するはず。それは後々、彼女の大きな財産となることでしょう。この先、苦しい場面を迎えたときに必ず思い出すはず。

「私はこれよりも、もっともっと厳しい状況をあのランカスターで乗り切った」と。

厳しい闘いにはなるでしょうけど、目標はあくまでも鈴木選手の目指すトップ10です。皆さん、日本から応援していて下さいね!

手前が刈り込まれ、クリークへと下る12番グリーン※撮影梅原敦

■ 梅原敦(うめはら・あつし)

1974年4月5日生まれ。41歳。京都府出身で学生時代は野球少年としてならし、専門学校卒業後に兵庫県内のゴルフ場に就職する。98年から2013年末まで、15年間にわたり藤田寛之の専属キャディとして活躍し、14年からはフリーに転身。男女ツアーを通じ、さまざまな選手のキャディとして選手をサポートし続けている。愛称は「梅ちゃん」。今年の全米女子オープンでは、鈴木愛選手のバッグを担ぐ。

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