1年以上未勝利、2位陥落のヤニ・ツェン「全く問題はない」
「クラフトナビスコ選手権」開幕前日、記者会見に現れたヤニ・ツェンは、いつにもまして陽気に振る舞っているように見えた。
3月18日、約2年間守ってきた世界ランク1位の座をステーシー・ルイスに奪われ、その翌週の「キア・クラシック」は、寝坊してプロアマのスタートに間に合わず、棄権という憂き目にあった。
それでも、これまで背負ってきたプレッシャーから解放されたヤニは、終始笑顔で、時に声を出して笑いながら、記者達の質問に答え続けた。「全く問題はない。プレッシャーから解放された。もう“世界ランク1位のように”プレーする必要がないと感じている。それは、とても大きなプレッシャーだったから」。
ターニングポイントは、昨年中盤だったという。2012年は開幕から連続8試合でトップ10入りと絶好調だったが、次の「ショップライトLPGAクラシック」で12位になった。直後にインターネットで自身のニュースを見た。“ヤニがひどいプレーをした”“ヤニの何が悪いのか?”“ヤニが苦しんでいる”。「なにかがおかしいと感じた」と、ヤニは振り返る。
「世界ランク1位の選手は、ミスが許されないように感じていた」とヤニ。他の誰よりも、自分自身に過度なプレッシャーを掛け続け、ゴルフの楽しさを見失った。
世界ランクの定位置から一つ順位が下がったのを見たとき、ヤニは“悲しさのようなもの”を感じたという。「数ヶ月前から心の準備はできていた。でも、悲しくて、世界1位の座を失ってから数日はとても感情的だった。でも、その後、すごく落ち着くことができた」。
フェイスブックを見てみると、意外なことが起きていた。多くの人を失望させ、悲しませたと思っていたが、まるで正反対だった。「ファンの人たちは、これで少しリラックスできるから私にとって良いことだとすら考えていた。彼らは私がコース上で笑い、再びゴルフを楽しむことを望んでいた。世界ランク1位について心配しないで。どこにいようが関係ない。彼らはいつもヤニ・ツェンをサポートしてくれている」。
再び、世界ランク1位という目標に向けて動き出したヤニは、LPGA参戦初年度に誓った言葉を繰り返した。「世界ランク1位で引退したい。たとえ1位を失っても、まだゴルフをやめたわけじゃない。まだ何年もあるから、いつか1位で引退したい」。(カリフォルニア州ランチョ・ミラージュ/今岡涼太)