ツアーの人気者候補生ルシディ
2002年全米女子アマチュア選手権の最後のパットがホールに沈み、ベッキー・ルシディが優勝を勝ち取った。“面白い女の子”として知られていた彼女は、一気に“ゴルフのできる面白い女の子”として知られるようになった。彼女は昔からパーティー好きとして知られていたが、これはここ数年注目を浴びたせいで、その一面を知られる機会が増えたからだ。
今年の全米女子アマチュア選手権の前に行われたディナーパーティーで、ルシディは皆に女子アマチュアチャンピオンとしての経験談を語り、フィラデルフィア・カントリー・クラブの面々を大笑いさせた。ロバート・コックス・カップ・トロフィーにはビールが16.5本しか入らないのでがっかりしたと語り、400人を手玉に取った。しかし彼女はビールで溢れるトロフィーを全て飲み干したのである。
それから彼女は全米女子オープンでジュリー・インクスター及びカリー・ウェブと36ホールプレーした事について語った。初日のティーオフ5分前にルシディはトイレに行ったのだが、出てきた時には顔を真っ青にしながら1番ティに向かった。
そのルシディの顔を見たウェブは「心配しなくても大丈夫。ジュリー(インクスター)も私も戻しそうな気分だから」と声をかけた。それに対しルシディは「本当?私も今吐いてきたところ」と答えた。
一言で言えばこれがルシディだ。どのような状況でも機転が利き、冗談を言えるのだ。
5月に大学(Purdue)で行われたNCAA選手権の表彰式では、毎年行われる、4年生による寸劇を南カリフォルニア州の学生が披露した。寸劇の終わりに4年生達は歌を歌うつもりだったが急に音響システムが故障した。しかしルシディはためらうことなくマイクを手にし、15分間お笑いネタを披露し、500名近くの人々をお腹が痛くなるほど笑わせた。
ルシディのユーモアの多くは、量が多くてまとまらない自分の髪の毛に関する自虐的なものだ。昨年マレーシアで行われた世界アマチュアチーム選手権の初日、米国チームの幸先のいいスタートを切った。選手たちはインタビュールームに行き、報道陣の質問に答えた。第1問目は「ベッキー、明日のヘアスタイルは?」だった。
この質問に対しルシディは「質問が理解できない。ゴルフの話をするんじゃなかったの?」と答えた。「でもその後、この1週間ずっと皆が私のことをダイアナ・ロスと呼んでいたことを知りやっと理解できた」
「赤道に近い場所で、死ぬほど湿度が高いので私の髪は爆発していた。 だから私は丁寧に『できる限り帽子の中に髪の毛を詰めて明日はプレーする』と答えた」
ルシディの陽気な性格は伝染病のようだ。誰もが彼女に魅了される。これは先週のフィラデルフィアで証明された。
今年の女子アマチュア選手権の準々決勝では、結局2位に終わったジェーン・パークに負け、試合の連続優勝は9試合で終わってしまったが、友人のビラダ・ニラパスポンポーンを応援するため、彼女は街に残った。また選手権が行われた1週間で多くの友人ができたため、彼女はすぐ街を出たくなかったという。
彼女が負けてしまった時、カントリークラブの多くの人が涙を流しただろう。クラブのメンバーは彼女を愛し、彼女もクラブのメンバーを愛していた。ルシディはこの面白い地元社会の全てを1週間で知った。地元の飲み屋に行き、司令官やメンバーに会って話した。また南カリフォルニア大学で学んだジャーナリズムのスキルを利用し、8番ホールのティのそばにある大きなレンガ造りの家には性転換手術の医師が住んでいる事を発見した。
USGA(全米ゴルフ協会)理事会のメンバーであり、25年間LPGA選手だったM.B.Pキングはこう述べる。「彼女はあの性格だから昔から良く目立った。すごく友好的で社交的かつ現実的。しかし私が一番感心するのは、彼女の非常にバランスが取れているところ。彼女は非常に素晴らしい選手だが、ゴルフが彼女の全てではないと思う」
ルシディにとってゴルフは全てではないが、次のレベルで戦いたいのであれば、彼女は今まで以上に真剣にゴルフに取り組まなければならないだろう。アマチュア選手権後、ルシディはカリフォルニア州に戻った。来季のプロツアー参戦を決するLPGAツアーのQスクールのために準備を整えるためだ。その期間は2週間。22歳のルシディはLPGAでプレーする事を期待しているが、もし無理だった場合自分の最終的な目標を達成するためフューチャーズツアー(米女子ツアー下部組織)の道を進む覚悟もできているとの事。何処に行こうが彼女にとっては良い経験になるだろう。
「人生を3度やり直したとしても彼女以上の優しい子には出会えないと思う。」とLucidのキャディを務めたリック・ラフラーはいつものサーファーっぽい声で言う。「彼女は本当に真のチャンピオンだ」
14歳でゴルフを始めたルシディは最近の基準では大器晩成型だ。でも彼女はゴルフを始めたばかり、まだ学んでいる段階だ。フルタイムのゴルファーになるというプレッシャーは間近にあるが、ルシディは今自分がいる場所に非情に満足している。
女子アマチュア選手権の前の週の1週間、彼女はスタンフォード大学のジュニアゴルフキャンプで教えた。「幼い女の子達にゴルフを教えるのはすごく楽しかった。将来楽しみのためにゴルフを教えたい」と彼女は述べる。
無人島に一人でいたとしてもルシディは楽しむ方法を見つけ出し、何かを笑わせていそうだ。
ルシディはゴルフをしていようと、冗談を言っていようと、いつでももっと見たい、聞きたいという印象を残していく。
Golfweek