渋野日向子の濃密な2カ月 「天狗になっていたワケじゃないけど…」
◇米国女子メジャー◇KPMG全米女子プロゴルフ選手権 3日目(10日)◇アロニミンクGC(ペンシルベニア州)◇6577yd(パー70)
2カ月に及ぶ長期海外転戦の最終戦。渋野日向子は“集大成”というフレーズを使いつつ、「(新たに)見つけるものの方が多いんじゃないかと思います」とも話していた。異国の地では毎日、毎ホール、毎ショットが勉強。6試合目の最後となる18ホールを前に、日本へ持ち帰るカバンの中に詰め込んだ宿題の中身にも少し触れた。
「ここに来るまでは『飛距離が必要』ってすごく思っていたんですけど、飛距離どうこうの問題じゃないなって。飛距離以外のところで何打も縮められると実感したので、日本に帰ってやることが今までと変わってくるかな、と」
今大会3日間のドライビングディスタンスは266.3yd。一方で3日目を終えたトップ10には、首位のキム・セヨン(韓国、262.3yd)をはじめ、アンナ・ノルドクビスト(スウェーデン、254.3yd)、朴仁妃(韓国、246.3yd)、ミナ・ハリガエ(249.3yd)、カルロタ・シガンダ(スペイン、261.3yd)と渋野より“飛ばない”選手も5人いる。
「グリーン周りで何打も損しているというのは、この6試合を戦って感じた。あとはパッティング。2m以内を外す回数がすごく多い。そういうところで自分のイメージ通りのボールの速さだったり、ラインで打てる練習の数を重ねていかないと」
練習で見せるアプローチの技術、バリエーションは着実にレベルアップしているが、コロナ禍でようやく連戦を組めるようになったのが、この2カ月でのこと。芝質など米ツアーならではの未知の難しさに遭遇することも多かった中、試合で真価を発揮する下地を整えている。
グリーン上はこの日合計35パット。安定感を増してきているショットはパーオン率80%に迫り、パット数もかさんだ。昼過ぎにホールアウトすると、食事を挟み、午後5時を迎える頃にようやくパッティンググリーンを出て練習を終了。妥協なき姿勢で課題と向き合う。
「(新たに)見つけるものしかないですし、別に天狗になっていたわけじゃないですけど、鼻をへし折られたというか…」。高い壁を前にして、どこかワクワクしているような雰囲気すらある。米ツアー挑戦への思いは、間違いなく大きくなったという。
「2カ月間でこんなにいろんな思いをするなら、1年間戦ったときにどんな思いをして、どう成長するんだろう、と。ゴルフって、18ホール通していいときはない。1試合で見たら、悔いが残る瞬間は多々あります。もちろん日本でも。ただ、アメリカツアーの悔しさは日本では消せないので。セッティングも芝も日本以上に難しいですし、日本以上に成長の幅は大きいと思うので。まだまだこれから、自分が楽しみですね」
現実を素直に受け止め、いま足りない部分を「伸びしろ」と変換できるメンタリティ。「そんなにすぐ来年やめるというわけでもないので(笑)、もっともっとゴルフに向き合う時間はたくさんありますし、しっかり練習する時間もある。(自分を)伸ばせるなと思います」。笑顔の裏に覚悟を示した。(ペンシルベニア州ニュータウンスクエア/亀山泰宏)