<滞在わずか24時間! 自らに強いた強行軍に、新・選手会長の決意のほどを見た>
あの行動力にはさすがに驚いた。新・選手会長のことだ。2月1日に行われたGTPAの懇親パーティ。ゴルフトーナメントの主催者が一堂に会する今年最初の集まりで、池田勇太が初仕事だ。スポンサーの前で就任の挨拶と今後いっそうのサポートを願い出た。
もっとも開催側は当初、そんな時間は設けていなかった。本人のたっての希望で実現したのだが、時期はちょうど自身のハワイ合宿のまっただ中。それにも関わらず、ぜひともそこで挨拶をさせて欲しいと頭を下げた池田は単身、飛行機に飛び乗った。前日の夜9時に成田空港に降り立ったかと思うと翌日は、選手会長に割り当てられたほんの数分のスピーチをそつなくこなして、すぐ夜中の便で、再びハワイに舞い戻ったのだ。
史上最年少の選手会長には、もともと並々ならぬ志があった。中でも一番の目標に掲げたのは「男子ツアーの試合数を増やすこと」。そのために、さっそく今季初戦を迎えた「ソニーオープンinハワイ」でもフル回転だったそうだ。プロアマ戦ではラウンドレッスンにも普段以上に身が入る。手取り足取りの指導でアマチュアのみなさんをもてなしたという。いざ本戦は残念ながら予選落ちをしてしまったが、空いてしまった週末は自ら放送ブースに座った。自分からテレビ解説をさせて欲しいと申し出たそうで、土日はラウンドレポーターとしてコースを駆け回ったそうである。
それもすべては「男子ツアーを盛り上げるため。少しでも多くメディアに取り上げていただくため」だ。今年は石川遼が米ツアーに本格参戦を果たして、一番人気の日本ツアーへの当番が減ってしまうことについては、すでに主催者のみなさんからも「懸念の声を聞いている」と池田は言い、「選手会長としても、非常に残念」と公式見解を述べながらも、「しかし、スーパースターは彼だけではない」。
その日はGTPA恒例の「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」の受賞式でもあり、男子プロは藤本佳則が表彰を受けた。東北福祉大の後輩を指さして「藤本という凄い新人もいるし、また他にも若いスターが出てくるかもしれない。微力ながら、僕もその仲間に入れさせていただいて、日本ツアーで戦う選手たちで日本ツアーを盛り上げるべく最善を尽くしていかなければならない」と、力をこめた。
また「USPGAツアーという厳しい世界で戦う石川選手を暖かい目で見守りながら、僕らは僕らで頑張っていく」と、決意を述べた。
破天荒な風貌とその振る舞いから、デビュー当時についたあだ名は「若大将」。しかしその池田も今年の誕生日には27歳を迎えて「僕も段々、おじさん化してきて中堅の部類に入ってきました」と笑う。「若手に負けず、僕も頑張らなければ」と、池田。「二足のわらじも両立できてこそ、一人前の選手会長でありプロゴルファーであると思います。どちらかをおろそかにするつもりは一切ございません!」。
わずか24時間あまりの日本滞在という強行軍も、「日本ツアーを変えたい」という新・選手会長の強い意志の現れだった。