ツアープレーヤーたちの熱き戦い<ザ・ロイヤルトロフィ>
欧州対アジアの対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィ」は連覇を狙うアジアが最後まで粘りに粘って大接戦を演じたが、結局1ポイント差でコリン・モンゴメリー率いる欧州チームに2大会ぶり3度目のタイトル奪還を許した。
2年連続でアジア代表をつとめた石川遼も、2日目と最終日のマッチで連敗を喫し、「自分より、はるかにレベルの高い選手にたたきのめされました」と悔しがったように、僅差の戦いの中にも欧州勢には、随所で力の差を見せつけられた。技術や精神面は言うまでもなく、改めて思い知らされたのは身体能力と適応能力の高さ。開催国タイは、日本からでも時差が2時間しかなく、しかもタイ出身の2選手を擁するアジア勢には、それだけでもひとつ有利だったといえる。
しかし、欧州チームには大幅な時差と、あとはあまり経験したこともなかったであろうタイの“灼熱地獄”も相当に堪えたはずだが、誰一人としてそんな素振りは微塵も見せず、むしろ「来年はヨーロッパで開催してはどうか」との提案が報道陣からキャプテンになされたときも、モンゴメリーは即座に首を振り「いやいや、今の時期のヨーロッパはどこもとても寒い。開催地選びが難しいよ。やっぱりこの大会はタイでやるのが一番いいんじゃないかな」と、余裕の笑みを見せたものだ。
ましてモンゴメリーには、プレーイングキャプテンという重責があった。伝統のライダーカップやプレジデンツカップなど、チーム戦のキャリアは申し分ないが、それでも自らも戦いを続けながら采配をふるうというのは、それなりの苦労があったろうと思う。本人も「自分もプレーをしたあとに組み合せを考えたり、メンバーにアドバイスを送ったりというのは気持ちの切り替えが非常に難しかった」と2日目に打ち明けていたから、今回の優勝は、また格別のものがあっただろう。
ライダーカップは米国VS欧州、プレジデンツカップは米国VS国際連合。「欧州とアジアにも、ライダーカップのようなイベントを」と2006年からスタートして早や5年。2008年は、タイの国王の姉の逝去で1年空いたが、今年4回目を迎え、大会の盛り上がりは年々確実に高まっている。2年連続でアジアチームのキャプテンをつとめた尾崎直道も「ギャラリーの数もかなり増えて、日本でもメディアの扱いがだんだん大きくなってきている。特殊なゲーム方式の認知度も上がって、ファンが興味を示してくれているという実感がある」と、その熱気を肌身に感じ、また初参加のモンゴメリーも「こんなにも大会が盛り上がっているとは、正直意外だった」と、驚いていた。
もっとも、主催者のホスピタリティや、開催コースのアマタスプリングCCのクォリティをひとたび体験すれば、さもありなんだ。「どれをとっても申し分なく素晴らしいし、このイベントが今後ますます発展していくのは間違いないと思う」と、モンゴメリーも太鼓判を押していた。アジアの選手には特に、チーム戦の醍醐味が味わえる機会はそう多くない。団体戦には普段のストロークプレーにはない感動があり、ファンにとってもまた、今までとはひと味もふた味も違った選手の素顔が見られる、絶好のチャンスでもある。
ぜひ10年、20年と回を重ねていって、いずれはこの「ザ・ロイヤルトロフィ」が、ライダーカップにも負けない伝統の一戦に成長してくれれば、きっとゴルフ界におけるアジア勢の地位向上にもますますつながっていくはずだ。