ホームズ炎上で改めて浮上したスロープレー問題
「ジェネシスオープン」は、最終日4打差2位タイからスタートしたJ.B.ホームズがジャスティン・トーマスを退け、4季ぶりのツアー通算5勝目を挙げました。
順延が続き変則的に行われた日程と、強風による難しいコンディションのなかで、選手たちへの負担は大きなものでした。パーセーブをどこまで我慢強く続けられるかという展開に、ホームズが安定したパッティングで勝利を手繰り寄せました。
彼のプレー自体は素晴らしいものでしたが、その反面でSNSを中心に進行の遅さを非難する意見が集中しました。優勝会見でスロープレーを問われると、ホームズは「強風が吹いていたし、グリーンは速かったのだから…」と言い訳にもとれる反応を見せ、さらに炎上。ここまで周りから祝福されない優勝者がいたのかと思えてしまうほど、その場の空気は重たいものになりました。
過酷な状況でしかも優勝争いをしている最中では、ある程度仕方のないことかもしれません。ですが正直、彼の最終日のプレーは誰が観ても不快に感じてしまうほど。試合後のギャラリーやメディアの反応からも、あきらかに敵視している様子がうかがえました。
実はホームズは、昨年の「ファーマーズインシュランスオープン」、最終ホールでイーグルを獲ればプレーオフという最終盤に、セカンドショットに4分30秒をかけるという問題プレーを起こしたことがあります。しかもその後、「勝つためには仕方がなかった」と開き直ったことで、さらに波紋を広げてしまったのです。
現在、米国のみならず欧州、アジア、そのほか世界中のトーナメントで、プレーファースト推進の動きは活発化しています。欧州やアジアでは、ショットごとに時間を計測する大会も生まれました。2019年から施行されたルールの大幅変更で、プロだけでなくアマチュアゴルファーの意識も高まっています。こういった取り組みが広がりを見せるなか、今回の一件はR&AやUSGA(全米ゴルフ協会)が重く受けとめることは必至と予測できます。
では、スロープレーの根本的な原因はどこにあるか? それは選手一人ひとりの問題意識にあると言わざるを得ません。実際にペナルティを科された事例は極端に少なく、2017年公式チーム戦「チューリッヒ クラシック」において、ブライアン・キャンベルとミゲル・アンヘル・カルバロ(アルゼンチン)組がペナルティを受けましたが、これが1995年以来22年ぶりとして話題となりました。現実的に罰則を受けにくい事情にこそ、選手の甘えが存在しているように見受けられます。
偶然なのか必然なのか、先週同大会が始まる前の時点で、アダム・スコット(オーストラリア)が米ゴルフダイジェスト誌(電子版)に、「スロープレーを解決する道は、選手にペナルティを科すこと。問題視するために自分が犠牲になっても構わない」という内容を掲載しました。現実的に撲滅するには罰則を明確化する。厳罰化することで問題意識が高まるということを説いています。やはりスロープレーを軽視できていた実情が、これまでの米ツアーに存在していたことが推測できます。
2020年、東京五輪が開催されますが、正式種目であるゴルフは他の競技と比較されることも多くなることでしょう。ゴルフ人気回復のチャンスとして、既存ファンのみならず、多くのギャラリーにアグレッシブな試合を観てもらいたい。米ツアーを通して、国内でも選手一人ひとりの意識が問われているように感じました。(解説・佐藤信人)