2019年 中日クラウンズ

令和時代へ国内男子ツアーに差す一筋の光明

2019/05/01 11:48
東建ホームメイトカップ会場での夕焼け

不遇の30代を終え、40代に入った尾崎将司選手が2年連続で賞金王を獲得した1989年。さらに強さを増していくジャンボさんの姿に、ファンが湧いた年こそが平成の始まりでした。

当時の国内男子ツアーは年間41試合が組まれ、毎週日曜日には決まって地上波の中継があり、ゴルフファンは胸を躍らせてテレビの前で観戦していました。尾崎将司選手、青木功選手、中嶋常幸選手を中心に、尾崎直道選手や飯合肇選手らが加わり、毎週繰り広げられる優勝争いに一喜一憂していました。それが週末のお決まりとなっていました。

情報元がいまより少ない分、PGAツアーや欧州ツアーは存在していましたが、「マスターズ」などのメジャー大会以外はそれほど注目されず、常に関心は国内ツアーに向いていました。ニュースが取り上げる回数も、PGAツアーや欧州ツアーはいまと比べて極端に少なかったと記憶しています。

それから平成の30年間が過ぎ、選手を取りまく環境やトーナメントの在り方、またゴルフ競技自体の価値観も大きく変わりました。今季の国内男子ツアーの試合数は25試合。賞金額は増えていますが、その数は減少の一途をたどったことを痛感させられます。

平成の時代で様変わりしたことは数多くありますが、なかでも一番変わったのは目にする情報量の多さではないでしょうか。テレビ中継のみが唯一の情報源だった時代から、いまやインターネットが普及し、パソコンやスマートフォンなどで、いつでもどこでも情報が得られる時代になりました。平成初頭に感じたテレビ中継の画面から伝わる緊張感や躍動感は薄れていってしまった印象があります。

ただ、それに近い興奮を改めて感じさせてくれたのが、先週の下部AbemaTVツアー「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」の試合でした。レギュラーツアーが休みだったため観ていたのですが、改めて生中継の魅力を再認識させられた内容でした。

試合は23歳のジャスティン・デロスサントス選手(米国)がプレーオフで中島徹選手を破り、優勝を果たしたのですが、2人のほかにも多くの選手が優勝争いに加わり、誰が勝ってもおかしくない大混戦。正直なところ登場人物は世間一般には無名に近いかもしれませんが、彼らが繰り広げた優勝争いは観ている側の興奮を呼び、非常に見ごたえのある展開となりました。

国内男子ツアーの人気低迷には、スター選手の不在を唱える人も少なくありません。30年前のAONの先輩方や石川遼選手、松山英樹選手のようなスター選手の存在なくして人気回復は不可決と訴える人も多いでしょう。ただ、一筋の光明がありました。選手名や選手のバッググラウンドを中継の間に知ったり、その後に検索してより詳しい情報を得ることでも、純粋にゴルフの面白さを伝えることができると感じたのです。

ことしから日本ゴルフツアー機構(JGTO)では、試合のハイライトや選手のインタビューの動画をインターネットのスポーツ総合サイト「スポーツナビ」で配信することを開始しました。多くの情報があふれるなかで、リアルな情報をいち速く配信することが必須だと考えてのことです。

令和に入って新たな時代になっても、ゴルフファンの求めるものは変わらないと思います。あの頃の緊張感や躍動感のある試合を待っているからこそ、新たな試みにもチャレンジするべきだと考えています。(解説・佐藤信人

2019年 中日クラウンズ