世界トップクラスの資質 藤本佳則の“慎重さ”
国内ツアーの2019年シーズン初戦「SMBCシンガポールオープン」は、ジャズ・ジェーンワタナノンド選手(タイ)が優勝しました。最終日まで優勝争いを演じ、日本人最高の2位タイに入ったのが、藤本佳則選手です。2打差で敗れましたが、7年ぶりに海外メジャー「全英オープン」(7月18日~/ロイヤルポートラッシュGC・北アイルランド)の出場権を手にしました。
29歳の藤本選手には、良い意味で見た目と性格にギャップを感じます。見た目でイケイケな若者のように感じる人も多いかもしれませんが、実際に話すと、すごく礼儀正しく丁寧です。プレースタイルにも同様のギャップがあり、構えてからの始動が早く、思い切りの良いショットを打ちますが、マネジメントはすごく堅実派。今週も広いサイドから安全にいき、4日間でボギーは4つ。リスクを極力避けたプレーをする印象です。
そして、その“慎重さ”こそ、彼の最大の良さだと思っています。
海外選手たちとプレーをしたり、ラウンドリポーターとして世界トップレベルの選手たちを見ていると、堅実派の選手がすごく多いことに気づきます。PWなどを手にする場面ではピンをデッドに狙いますが、5Iや6Iを持つときはリスクを避けることが非常に多い。選手や状況によって当然プレースタイルは異なりますが、世界トップクラスでも想像以上に無理をしない(無理をして攻めない)、という印象なのです。
藤本選手はパーオン率で常にツアーの上位にいます。7年連続で国内最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」に出場し、賞金ランキングも上位の常連。飛距離も出るし、海外で活躍できる日本人選手を聞かれると、必ず藤本選手の名前も挙がります。一方で、彼はあまり海外志向が強くないのか、とも感じていました。実際に本人と話したわけではありませんが、将来PGAツアーに挑戦したいと断言する若手が多い中、これまで海外に向けた発言を聞くことはなかったように思います。
大会3日目に世界ランキング23位の招待選手ポール・ケーシー、最終日では同39位のマシュー・フィッツパトリック(ともにイングランド)と同組でした。特に3日目のケーシーとのラウンドでは、2打上回ったスコアと同じく、見劣りなどは一切ありません。藤本選手にバタつく様子もなく、堂々としたプレーぶりが印象的でした。世界トップランカーたちと張り合えることを証明したと思います。
実力は折り紙付きです。世界ランキングは136位に上がり、今後の活躍次第では「全米プロゴルフ選手権」(5月16日~/ベスページ・ニューヨーク州)の出場も見えてきます。世界でも十分に通用する―。そんな自信が少しでも藤本選手に芽生えていたら、いちゴルフファンとして楽しみです。(解説・佐藤信人)