ネットオークション落札のアイアンが大変身?蛭田みな美とクラブの秘密
◇国内女子◇LPGA新人戦 加賀電子カップ 最終日(9日)◇グレートアイランド倶楽部(千葉)◇6526yd(パー72)
2日間で行われた新人戦を2位で終えた蛭田みな美のキャディバッグには、メーカーから提供を受けたものや購入したものを含めて、5社のメーカーのクラブが入っている。中でも、アダムスゴルフのアイアン(4番~PW)は、なんとネットオークションで3万9000円程度で落札したモノ。来季はツアープロとして初のシーズンを迎えるが、期待のルーキーはクラブ契約を結んでいない。蛭田は「来年もこのクラブでいくと思います」とサラリと言いのけた。
2014年「日本女子アマチュア選手権」、15年「日本ジュニアゴルフ選手権」を制した華々しいアマチュアキャリアを経て、7月のプロテストに一発合格。今月のファイナルQT(最終予選会)は23位で通過し、来季のツアーフル出場権を手中に収めた。今大会を競った今年プロテストに合格した21選手の中でもエリート街道を歩んでいる。当然、各メーカーから契約のオファーもあるが、いまのところ首を縦に振っていないのには理由がある。父・宏さん(56)が、アマチュア当時から蛭田のクラブ調整をおこなってきたからだ。
「娘のクラブに関しては、よくわかる」と話す宏さんは、普段は福島県で獣医として働いているが、趣味のゴルフはベストスコア「71」の腕前。最初は自分のクラブ調整のために設けた自宅の工房は、蛭田が本格的にゴルフを取り組んで以降、いつしかクラブカスタムのための道具でいっぱいになった。試打室も用意し、ボールの回転数など詳細な数値を測るトラックマンを置き、娘のスイングをチェックしている。
そのこだわりぶりは、徹底している。宏さん曰く、自宅にストックしてあるクラブの本数は「多すぎて、わからない」と言うほど。クラブを購入すれば、まずはヘッド、シャフト、グリップ、さらにはクラブヘッドなどに貼られている鉛まで完全に分解。蛭田がゴルフを始めた当初から続けている習慣で、「今まで、(分解を)しなかったことがない」と言う。そこから一つ一つのパーツを組み合わせ、重さも1mg単位までこだわり、蛭田オリジナルのクラブを完成させるのだ。
父のこだわりの背景には、30歳から始めたもう一つの趣味、ラリーがある。荒れた砂利道や林道、山の中などでタイムを競う。ここで大切になるのが、車の整備。「タイヤの向きがそろっているか、ということから確認する。それは、ミスが死亡事故につながるから。ほとんど(の死亡事故)は整備ミスなんです」。
ここから、何に対しても道具にこだわるようになった。もちろんメーカーの既製品に問題を感じているわけではない。「うちが変わっているんですが…」と、宏さんが昔から行ってきた自然のスタイルを、いまも続けているだけだ。そもそもトップアスリートは、道具に徹底的にこだわるもの。野球界でも、イチロー選手はバットに最高レベルのこだわりをもっていると聞く。「道具を使うスポーツ。その良さを最大限に引き出そうと、使う道具に徹底的にこだわるのは普通のことだと思う」と父。このオフも、親子二人三脚で、新シーズンに向けたベストな14本を整えていく。(千葉県長南町/林洋平)