「お世話になった熊本に」大山志保、優勝賞金1440万円を寄付へ
静岡県の川奈ホテルGC富士コースで開催された「フジサンケイレディスクラシック」で、大山志保が10年ぶりの大会2勝目をマークした。
最終組の1つ前の組でプレーしていた大山は、上がり3ホールで2つのバーディを奪い、首位を走るアン・ソンジュ(韓国)の1打差に迫り、最終組のホールアウトを待った。アンが最終18番のパーパットを外したのを確認後、プレーオフに備えてパッティンググリーンで練習を開始。アンがまさかのダブルボギーを喫し、優勝の吉報が転がり込んだ。
難関ホールが続く川奈の終盤。16番(パー5)では、風に乗ったティショットが傾斜をつたって約300ydを稼ぐビッグドライブ。2オンを狙った残り180ydからの第2打は、グリーン奥の傾斜に止まった。「ロブショットでぴたっと寄せる」。ピンまで13ydのアプローチはイメージどおりの弧を描いて30cmにピタリと止まり、楽々バーディを奪った。
アンが16番、17番で2連続バーディを奪って、その差は2打差と開いたが、最終ホールの第2打は「ピンを狙っていった」。左1.5mにつける会心のショットで勝利を引き寄せた。
宮崎県出身の大山だが、清元登子の門下生となった熊本中央女子高(現・熊本中央高)時代を含む7年間、親元を離れて熊本で過ごした。熊本や大分を襲った地震は他人事ではない。地震の起きた14日は、熊本開催の「バンテリンレディース」に出場する予定だった大山自身も、ホテルで被災した。「ゴルフをしていていいのかなと思ったけど、私はゴルフで頑張るしかないんだ」と奮起し、臨んだ今週だった。
この優勝で獲得した賞金1440万円の全額を、被災地に義援金として寄付すると会見で述べた。試合前には、父・晃さんにも「もし今週優勝したら、お世話になった熊本のために役立てたい」と明かしていたという。「1日でも早く元の生活に戻って、笑顔が戻ることを心から願っている。本当に少しですけど気持ちだけでも届けたい」と語った。
川奈で初めてカップを掲げてから10年が経つが、常に支えてくれる周囲への感謝を忘れずにいる。大山の精一杯のプレーに、被災地からも知人のメッセージが届く。7月までに2勝。掲げる目標の先にある五輪出場という大きな夢に一歩近づいた姿は、きっと熊本にも届いたはずだ。(静岡県伊東市/糸井順子)