渡邉彩香 初優勝を引き寄せた2度のチップイン
「まだ実感が沸いてきません。優勝ってこういうものなんですか?(笑)」宮崎県で開催された「アクサレディス in MIYAZAKI」の最終日。首位の藤田幸希から2打差で出た渡邉彩香が、最終18番(パー5)でイーグルを奪う劇的な逆転劇でツアー初勝利を飾った。グリーンサイドで同期の比嘉真美子、福田真未らに見守られながら、笑顔はじける瞬間だった。
この日、最終組でスタートした渡邉は、スタートホールのティショットを右サイドの池に入れてボギー発進。不穏な立ち上がりとなるも、7番、9番で2つのバーディを奪ってサンデーバックナインを迎えた。藤田に13番でバーディを奪われた時点で最大5打差のリードを許したが、終盤の藤田の失速と、渡邉の猛チャージで1打差に迫り、最終ホールを迎えた。
18番パー5。ここ一番の勝負どころで、ツアー屈指として鳴らすロングヒッターのアドバンテージが存分に生きた。ティショットをフェアウェイに置くと、迷うことなく3番アイアンで放った2オン狙いの第2打は、右の池を避けるようにグリーン左サイドのラフへ。「とにかくプレーオフに持っていきたい」と放った約20ヤードのチップショットはピン方向に転がってカップインし、会場は大きな歓声と、どよめきに包まれた。
「入ればいいなぁと思いましたが、まさか入ってくれるとは思いませんでした!」。カップインの瞬間は高々とガッツポーズを作り、キャディと抱き合って歓喜。一転して1打を追う立場に変わった藤田はグリーン奥からのアプローチを外し、バーディを逃して決着を迎えた。
初勝利を引き寄せたこの劇的なチップインイーグル。渡邉は2日目もほぼ同じ位置からのチップインバーディで最終日、逆転優勝への望みを繋いでいた。「オフで鍛えたアプローチが結果的に優勝に繋がった」。最大の武器である飛距離に加えて上達中の小技が、この日は一層、光りを増した。
多くのギャラリーの歓声と拍手で迎えられた表彰式。「年内にもう1勝。当面の目標はオリンピック出場です」と、次なるステップに向けて20歳は瞳を輝かせる。「最後まであきらめない」という思いの強さが掴んだ初勝利だった。(宮崎県宮崎市/糸井順子)