「歯がゆかった・・・」最後まで続いた感覚の狂い 【有村智恵インタビュー vol.2/国内ツアー後半戦を振り返る】
<とにかく、目の前の1勝が欲しい>
シーズン前半戦を終え、およそ1ヶ月のオープンウィークに突入。その間、有村智恵は国外へ飛び、「エビアンマスターズ」、「全英リコー女子オープン」と海外ツアーを転戦する。帰国してから1週間は身体を休め、「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」から始まる国内ツアー後半戦に再び身を投じた。
「後半戦は(国内)メジャーが3試合も入っているし、賞金も高くなってくる。とにかく目の前の1勝が欲しいと思って、ずっと練習を続けていた」。シーズン前半15試合を終え、有村が自身に下した評価は「30点」と厳しいもの。その遅れを取り戻すためには、ショットやパットの微妙な感覚のズレを解消することが最優先。トーナメント期間中であっても、日暮れまで黙々と、ストイックなまでに練習に打ち込む姿が目立った。
<去年との違い>
それでも、一度狂い始めた歯車はなかなか噛み合ってくれない。「噛み合う日がくればいいなと思っていたけど、自分自身がとにかく納得のできるショットを打てておらず、パットも不安を抱えながら打っていた」。後半戦はスタートから3試合連続でトップ10フィニッシュを続けたが、プレー内容は未だ納得のいくものではなかった。5勝した昨シーズンとの違いを、次のように語る。「去年も波はあったけど、パットが良いときの波が来た時に優勝できていた。そうじゃないときも、ショットでカバーをしながらそこそこの順位。今年は、パットの好調な波がまったく来なかった」。
試行錯誤のラウンドは、その後も続く。「日本女子オープン」では2日目に2位に浮上するものの、3日目に「75」を叩いて後退。「感覚のズレが埋まったとしても1日しか続かず、3日間、4日間と続けることができなかった」。この頃は、しばしば復調の兆しを見せるものの、それを持続できない展開が続いた。抜け出せそうで、なかなか抜け出せない長いトンネル。「とにかく、歯がゆかった」。見守るファンも、有村と同じ心境だっただろう。
<賞金女王争いの終幕>
週が過ぎ、月が過ぎていくごとに、目標に掲げていた賞金女王の可能性も刻々と薄れてゆく。アン・ソンジュが圧倒的な強さで独走状態となり、有村からも「止めなければいけない」という言葉が何度も聞かれた。徐々に増していく焦りと、歯がゆさ。「自分にプレッシャーを与えてくれるものでもあったし、(賞金女王への)モチベーションは最後の最後まで途切れることはなかった」という意識とは裏腹に、どうしても結果がついてこない。その中でも「まだ、何があるか分からない。そこまでは頑張りたい」と自らを鼓舞し続けたが・・・。残り3試合に迫った「伊藤園レディス」で優勝を逃し、その可能性はついに潰えてしまう。最終的には賞金ランキング6位。それでも、賞金女王を目標に置いて戦ったシーズンは、有村に新たな課題や意識を植え付けた。「私にとって、良い経験になったと思う。まだ早かったのかな、とか、いろいろな悩みも与えてくれた」。
【有村智恵インタビュー vol.3/海外ツアーを振り返る】に続く
<夏場も体力的な不安は無し! その理由とは・・・>
シーズンを通して納得のプレーができず、心理的にも厳しい展開が続いたが、体力的な面では「不安は一切なかった」と振り返る。強調するのは、記録的な猛暑に見舞われた夏場での戦いだ。一昨年には熱中症にかかるなど体調を崩し、そのまま失速した経験を持つ。以降は「夏場の過ごし方を大切にするようになった」と、暑さを乗り切ることは有村にとって1つのテーマとなった。ここで支えとなったのは、今年4月から契約を交わした森永製菓の『ウイダー』ブランドが提唱する、スポーツ栄養理論に基づくサポートプロジェクトだ。有村のプレー時も、現地に派遣されたスタッフが常に帯同。フルーツなど栄養補給用の食料が入ったクーラーボックスを携帯し、最適なタイミングで有村に摂取させた。「お腹が空いた時に好きなフルーツが食べられたし、試合中に疲労を感じることもなく、良い栄養を摂りながら過ごすことができた。今年の夏場は、本当に元気に過ごすことができた」と、有村もその効果を振り返っている。