「終わった…」テレビ塔直撃から奇跡の生還 穴井詩が4年ぶりV
◇国内女子◇ヤマハレディースオープン葛城 最終日(2日)◇葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県)◇6480yd(パー72)
一時は首位に5人が並んだ混戦のなか、ほかの選手のスコアを気にする余裕なんてまったくなかった。「耐え忍んで、耐え忍んで…」。必死で戦った穴井詩に勝利の女神がほほ笑んだ。
3日目まで9割超えだったフェアウェイキープ率も、この日ばかりは緊張で思うようにコントロールが効かなかった。首位と2打差で後半に入ると、14番でティショットを左に大きく曲げてボギー。18番(パー5)で2mのバーディパットをねじ込み単独首位に抜け出したが、そのあともタフな展開が待っていた。
後ろの組のホールアウトを待つ間、「体を冷やすのはまずい」とクラブを振ったが緊張は高まるばかり。「しょうこは小技が巧い。絶対に獲ってくる」と覚悟していたとおり、最終組のささきしょうこがバーディフィニッシュで通算9アンダーに追いつき、一騎打ちのプレーオフに突入した。
18番で行われたプレーオフは、1ホール目のティショットが「すごい緊張していて、右にすっぽ抜けた」。コース脇に立つテレビ塔に当たるのを見て「終わった…」と思ったが、跳ね返ったボールがフェアウェイど真ん中に戻って来た。パーで切り抜けたが、2ホール目はグリーンを狙った2打目がバンカーにつかまった。そこから1.5mに乗せるナイスショットでバーディを奪い、力強いガッツポーズで久々の勝利をつかみとった。
「まだ夢なんじゃないかと思っているくらい」と2019年「NEC軽井沢72」以来の優勝を喜んだ。今年から教わり始めた石井雄二コーチのもと、武器としていた飛距離に加えてショットのコントロール性を高めようと取り組んできた。本大会でのフェアウェイキープ率は89%(50/56)をマーク。「練習してきたことが結果として現れたのかなと思って、すごくうれしい」と喜んだ。
これで通算4勝となり、次に目指すのはシーズン複数回優勝。「まだしたことがないので、1回と言わず何回もしたい。シーズンで1億円超えもしたいし、国内メジャーも獲りたい。欲望しかないです」と、次の勝利を求めて戦っていく。(静岡県袋井市/谷口愛純)