五輪メダルに記録ずくめ、悔し涙も…稲見萌寧の激動シーズン
稲見萌寧がシーズン9勝を挙げて、初めての賞金女王に輝いた。コロナ禍で統合された2020-21年シーズン全52試合の長期戦を制した。
初めての海外メジャー、初めての五輪、メジャー初Vなど激動のシーズンを振り返る。
屈辱も力にシーズン初V
台風によるコースコンディション不良で36ホールに短縮して行われた2020年10月「スタンレーレディス」では、通算5アンダーでホールアウト。浅井咲希、ペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフを制して、シーズン初優勝を遂げた。
20年8月「AIG女子オープン」(全英女子)で海外メジャーに初出場したが、リンクスコースと風にほんろうされ、「77」「79」と完敗で予選落ち。「後悔したことはない。行かなきゃ味わえない経験だった」と振り返った。
スタンレー最終日の平均4m/s以上の風も「全英女子は暴風雨。きょうは“ゴルフ日和の風”」と悔しさを力に変えて、ツアー2勝目を手繰り寄せた。
ツアー記録の13バーディ
21年5月「中京テレビ・ブリヂストンレディス」2日目には、ツアー最少タイ記録となる「61」をマーク。13バーディ(2ボギー)を奪い、韓国の申ジエらが持つ11バーディの記録も更新した。
「安心するより『もっともっと』というふうに欲を出して、全ホールバーディを獲る勢いで回っていた」と貫禄のプレー。同大会は2位に6打差をつけて圧勝。シーズン6勝目をホステス大会で飾った。
まさかの惜敗に涙
21年6月「宮里藍 サントリーレディス」では4打差をつけて単独首位からスタートしたが3バーディ、3ボギーの「72」と伸ばせず。同組でプレーしていた青木瀬令奈に1打差で逆転を許して涙を流した。
「一つずつ、少しでもスコアを伸ばせていけたらと思っていた。我慢のゴルフかなと思っていたけど我慢できないところはあった。単独トップから負けたのは初めてで、自分のミスで負けたのが一番悔しい」
3日目までただ一人ノーボギーを貫いていただけに、最終日の失速は多くのファンも驚く結果となった。
日本勢初のメダル獲得
21年夏の東京五輪では2位で並んだリディア・コー(ニュージーランド)をプレーオフで撃破し、銀メダルを獲得した。元世界ランキング1位、前回「リオデジャネイロ五輪」銀メダリストを相手にもひるまなかった。
日本人ゴルファー初のメダル獲得をもたらし、「自分で実感はないけれど、日本開催で日本人がメダルを獲ったことで、これからゴルフを始める人や、私もプロになりたいというジュニアたちが増えてくれるとうれしい」と話した。
優勝、棄権、メジャー初V
21年8月の「ニトリレディス」を制したものの、9月の「ゴルフ5レディス」は初日に左腕痛で無念の棄権。「6番ホールで虫に刺された。ブヨかアブか何か分からないですけど、何かに刺されて。めっちゃ血が出た」と説明した。
それでも続くメジャー「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」は、2位に4打差をつけて優勝。大会最少ストロークでのメジャー初Vとなった。
「一番の目標だったメジャー優勝ができてうれしいです。ティショットをミスしてもフェアウェイに行ってくれたり、ショットがついて、そのパットも入ってくれて、いろいろと良かった一日でした」。賞金ランキングでもトップに浮上した。
史上2番目の若さで10勝目
ツアー通算10勝目を21年11月「伊藤園レディス」で挙げた。22歳108日での2桁勝利は宮里藍の20歳105日に続く2番目の若さ。出場73試合目での達成は宮里(47試合)、韓国アン・ソンジュ(65試合)に続いて3番目。
17年に現役を退いた宮里さんの印象については「テレビとかでお会いしたが、ものすごく聞き上手。私の話を真剣に聞いてくれて。自分のつらい思いとか、藍さんの聞き方がうまくて涙が出そうになった。心の底からいい人」と尊敬の念を明かした。