国内女子ツアー

2打差でプロテスト不合格の平塚新夢「惜しいとは思わない」けど…「苦しい」

2021/07/07 14:45
狭き門を突破できなかった平塚新夢は次へ(提供:サジットメディア)

新型コロナウイルスのため延期された日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の2020年度最終プロテストは、6月25日に終了した。通算4アンダー、20位タイまでの22人が合格。「約3.9%」の狭き門だったが、壁に阻まれた選手の大半は、すぐに始まる21年度テストに向けて動き出した。彼女たちは何を思い、チャレンジを続けるのか。その素顔に迫る。

■「今度は合格できるとは思わない。また、白紙の状態からです」

21歳の平塚新夢(あむ)は、20年度最終プロテスト終了後から日々、出勤している。職場は茨城県内の室内ゴルフ練習場。8時間勤務の前を自身の練習にあてている。「外の練習場で打っていますが、時間がない時は職場で練習します。ただ、毎日ではありません。自分には生活するための仕事があるので、ラウンドは基本、プライベートではしません。試合前の練習ラウンドも、仕事に間に合うように早いスタートにしています。理由は、ゴルフは生活の一部であって、テストに向けての練習を生活の軸にしたくないからです」

最終プロテストの結果は通算2アンダーで27位タイ。2打及ばず不合格だった。周囲からは「惜しかったね」「次はいけるのでは」などと声をかけられた。だが、本人の意識は違う。「惜しかったとは思わないし、『今度は合格できる』とも思いません。次の最終は別のコースでの開催になりますし、出場者も一緒ではないので、また、白紙の状態からと思っています」

平塚にとって、20年度最終の会場になった静ヒルズCCは、中学時代からの馴染みのコースだった。高3で出場したステップアップツアーの「静ヒルズレディース」では、アマチュアながら優勝を飾った。しかし、今回は練習ラウンドの時点で違和感があったという。

「コースに抱いてきた硬いグリーン、ラフもしっかりというイメージとは真逆で、柔らかいグリーン、浅いラフだったからです。すぐに『伸ばし合いになる。難しいコースで耐えるゴルフが好きな自分には不利』と思いました。なので、2アンダーで終わった時点で『話にならない』と思い、結果が分かる前に帰りました。あとで『4アンダーで合格だった』と知り、『意外に伸びなかったんだ』とは思いましたけど」

1打差、2打差で落ちた選手は、深く落ち込むのが常だが、平塚は冷静だった。「悔しいとは思わないですね。第2日でダボを打って『75』にしたのはもったいなかったですけど、自分のせいですからね」

能力の高さは、ジュニア時代から知られてきた。中学時代から米国遠征を繰り返し、中2で「世界ジュニアマッチプレー選手権」に優勝。高1時には、「全国高校ゴルフ」個人3位に入った。そして、ステップアップツアーの大会を制覇。その流れは、高卒1年目で途切れた。初挑戦だった18年度プロテスト2次予選を「群発頭痛」で欠場。その後、「10万人に1人」といわれるる国の指定難病「成人スチル病」(発熱、発疹、関節の節々が痛くなる病)を発症し、服用したステロイド剤の副作用で、体重が増加した。顔が丸くなる「ムーンフェイス」の状態にも悩まされた。

■波乱万丈の元天才少女「次がダメだったら考える」

自身2回目の19年度テストは2次で不通過、20年に予定されていたテストは、コロナ禍で延期。その過程で今の仕事に就いた平塚は「こういった規則的な生活の方が自分に合っているのかも」と思い始めたという。「なので、長い4日間を終えてホッとしたところもあります。もちろん、落ちて良かったとは思いませんし、年内にある次の21年度テストも受けますが、これでダメだったら、その先のことを考えてみようとも思っています」

一方で20年度テスト合格者の平井亜実が、翌週に出場した「資生堂レディスオープン」で上位争いをし、19年度合格者の多くがツアーで活躍中の現実がある。参加している「DSPE」(ツアープロの目指す女子ゴルファーを支援する団体)のメンバーでは、最も合格に近かったのが平塚自身であり、「なんだかんだで、自分に期待しているところもある。ツアーに出て稼ぎたい思いもあります。だから、苦しいんです」とも言った。

かつての「天才少女」は、輝きを失ってはいない。ただ、「思いの強さ」や練習量だけで、超難関テストを突破できるとも思ってはいない。病を抱えているゆえに、ツアープロ生活に耐えられるかという不安もあるだろう。そして、何より「ゴルフを続けるにしても、ちゃんと自分で仕事をして、稼いでいる中でやっていきたい」という強い信念がある。数多くいる挑戦者たちの中でも、異彩を放つ存在。21年度テストは2次からの参加で、自宅から通える茨城会場(ザ・ロイヤルGC)を選択する予定だ。