18年目の「びっくり優勝」 市原弘大が最終ホールで劇的V
◇国内男子◇日本ツアー選手権森ビル杯 最終日(3日)◇宍戸ヒルズカントリークラブ(茨城県)◇7384yd(パー71)
プロ転向から18年でつかんだツアー初優勝は、鮮やかな逆転劇だった。最終18番でグリーン奥からチップインバーディを決めた市原弘大が、この日5アンダー「66」で通算12アンダーとしてホールアウト。1組後の最終組で回る時松隆光に並ぶと、時松が最終18番をボギーとして、勝負は劇的に決着した。
「びっくり優勝です」と市原は目をパチクリした。5打差を追って出た最終日は、常に追いかける立場にいた。13番でちらりとボードを見たときは、首位は13アンダーになっていた。ホールアウトしたスコア提出所で「プレーオフの準備をした方がいいんじゃない?」と言われるまで、自分の順位は知らなかった。
10番までに5つスコアを伸ばしたが、11番、13番、14番とボギーを叩いて後退した。だが、ボギーを打っても、すぐに気持ちは切り替えていた。
3週間前の「日本プロ」。市原は、シーズンオフの合宿に参加するなど親交の深い谷口徹の優勝争いをロープ内で観戦していた。スコアが悪くなると早歩きになったり、肩を落としたりする選手がいる中で、谷口は普段と変わらずリラックスして、かつ気合いが入っているように見えたという。抜群のショートゲームは真似しようと思ってもすぐにはできないが、「歩き姿、立ち姿なら自分も真似できるかな」と、次週からすぐにそれを取り入れた。
15番で4mを沈めてバーディ。16番も4mの下りフックラインを沈めて2連続とした。中盤の3ボギーの後、最終18番を含む上り4ホールで3バーディ。「へこたれている暇はない。あのままズルズルいっていたら、谷口さんに『まだまだやなぁ』って言われただろうし」と目を細めて小さく笑った。
優勝を決めた市原のことを、谷口は他のプロや関係者とともに待っていた。「谷口さんを見たときに、ちょっとうるっと来ました」と市原は言う。「でも、その瞬間に水を掛けられちゃったから涙はさめました」と、その顔は泣き笑いに変わっていた。(茨城県笠間市/今岡涼太)