今季唯一の国内試合 松山英樹がやりたかったこと
◇国内男子◇ダンロップフェニックストーナメント 最終日(19日)◇フェニックスカントリークラブ(宮崎) ◇7027yd(パー71)
ぴんと張り詰めた黒松林の冷気が、上気したギャラリーたちの大歓声で一瞬温かくなったように感じた。松山英樹が試合では自身初となるホールインワンを決めて、最終日は「69」。優勝したブルックス・ケプカには10打差をつけられたが、通算10アンダーの5位で、今季唯一の国内での試合を終えた。
「試合でやってみないと分からない部分が今週分かったので、良い一週間だったと思う。ホールインワンという最高のおみやげもあった」と、記者会見場の松山は笑みをたたえて振り返った。内面からあふれてくる余裕が、その場の空気を優しく包みこんでいた。
3週間前の中国・上海から着手したスイング修正(“改造”は大袈裟と本人は言う)。その方向性は「自分のフィーリングを出しやすいスイングにする。自分は、持ち球をドローだと思っているけど、一緒に回っている人はフェードだと思っているかもしれない。そのズレがいまの状況。そこら辺を直さないといけない」という。
“フェアウェイの真ん中を狙って、ドローかフェードのどちらかの球でフェアウェイに残ってくれればいい”、という状態から、さらに精度を高めていく。「マスターズで思ったように打つためには、いままでのスイングじゃだめだった。だいぶ遅れてしまったものを、いましっかりとやらないといけないと思う。ちょっとした変化が大きな差につながってくる」という決意で始めた取り組み。「それができるようになるには球数を打たないと。1カ月で2万球くらい打とうかなと思います」と、数日前に石川遼が語った言葉をさらりと織り交ぜ、記者たちをおおいに笑わせた。
予選ラウンドのペアリングは、松山本人の希望だった。尾崎将司と同組でやりたかったのは「(昔、尾崎が海外メジャーで)ジャック・ニクラスやアーノルド・パーマーと争っているときと比べて(自分が)どうなのかなっていうことを聞きたかった」からだという。
「試合中なので無理だったけど、試合でしか分からないこと、感じられないことがあると思うので、興味があって回らせてもらった」と話し、「メディアのみなさんが聞いてくれることを信じています」と目配せした。
年内は残すところあと1試合。2週間後にバハマで行われる「ヒーローワールドチャレンジ」で締めて、年明けは1月第1週のマウイ島から始動する。彼はきっと夢のようなことを実現してくれる。そんな余韻を残して、松山は会見場の席を立った。(宮崎県宮崎市/今岡涼太)