「マスターズに行きたい」賞金トップ再浮上の小平智と父との約束
◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(12日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7246yd(パー72)
勝者にふさわしい、強いゴルフで締めくくった。首位に3打差の3位タイから出た小平智が「65」をマークし、通算18アンダーとして10月の「トップ杯東海クラシック」以来となる今季2勝目を飾った。後続に3打差をつける鮮やかな逆転劇で、優勝賞金4000万円を上乗せし、ランキングは4位からトップに浮上。目標とする年末の世界ランク50位入りに向けても前進した。
あわや、というべき一打にも小平は動じなかった。6番(パー5)で、フェアウェイからの第2打はグリーンエッジの手前に落ち、池ポチャ寸前のラフで残った。帯同した妻の古閑美保も「ピンしか見えていない」と冷や汗を浮かべた場面だったが、打った本人は「世界の選手は池があってもバンバン(ピンを)攻めていく。守りだけでは勝てない」と堂々としていた。平然とウェッジで1.5mに寄せてバーディとすると、一気に加速した。7番(パー3)で4mを沈め、8番でも決めて3連続。アイアンからショットを放つたびに、ボールはピンに絡み、後半10番からの2連続バーディで混戦を抜け出した。
「最後にカップに入れるまでは確信できなかった」という終盤もたくましかった。16番で1.5mのパーパットを沈め、17番(パー3)ではバンカーからの2打目を難なく50cmに寄せた。「今年一年、あれが上位にいられる要因」と、今季出場21試合ですべて決勝ラウンドに進出し、トップ10入り14回というハイレベルな安定感に胸を張る。
3打のリードを持って迎えた最終18番(パー5)も、攻めの気持ちは変わらない。「イーグルを取って(後続が)アルバトロスでも勝てないようにしたかった」と、果敢に7Iで2オンに成功。2パットバーディでギャラリーに「完勝」を印象付けた。
賞金ランクで首位に再浮上。かねて抱く海外進出への野望から「賞金王になるよりも、世界ランク50位以内に入りたい」と公言してきた。この日も「みんなに『賞金王に』と言われるけれど、マスターズに出たい気持ちが一番強い」と同じだった。学生時代、元レッスンプロの父・健一さんに約束した。「いつかマスターズに連れていくよ」。両親にとって初めてとなる海外旅行のチケットを“オーガスタ往復便”とするには、絶好のタイミングだ。
2つのターゲットに向けて取り組むべきことは、相反するものではない。「最終的にマスターズに行けて、賞金王になれたら一番うれしい」と残り3試合を見据える。「一年間で一番、努力して、頑張って球を打った人が賞金王になる。それは神のみぞ知るところ」。その自信はあるだろうか?
「ここ最近ですけど、練習、トレーニングと、人に負けないくらいやっている。すべてを含めて、ゴルフに向き合っているのが自分だと思う」。最後も、まっすぐに言い切った。(静岡県御殿場市/桂川洋一)