池田勇太 大量リードの重圧はねのけ2度目の日本一
◇国内男子メジャー第3戦◇日本オープンゴルフ選手権競技 最終日 (15日)◇岐阜関カントリー倶楽部 東コース(岐阜)◇7180yd(パー70)
のしかかる重圧を、渾身のスイングで切り裂いた。単独首位から出た池田勇太が「72」とスコアを落としたものの、通算8アンダーで3年ぶりの「日本オープン」優勝、今季3勝目を飾った。2ホールでOBゾーンに打ち込むなどティショットが荒れ、同じ最終組でプレーしたアマチュアの金谷拓実(東北福祉大1年)に迫られながら、1打差で逃げ切った。
最終18番、20m近いロングパットをカップに寄せると、池田はこみ上げてくる涙を必死に抑えた。降りやまない雨に打たれながら、2パットでパーを拾った。「なんだろうな…日本オープンを勝つというのは、難しいもんだね…」。2014年に初めて手にしたナショナルタイトルの重みを、3年経って改めて感じられた。
54ホールを終えて2位には5打差。「優勝おめでとう」。前日の時点でそんな声を耳にした。しかし池田は、その3日目の終盤3ホールでたたいた2ボギーのことが頭から離れなかった。「悔しくて、2回くらい夢に出てきた。なんでそうなったのか…納得がいかなかった」
周囲の祝福ムードとは裏腹に、消せない不安は最終日に影響した。序盤3番、1Wショットを左のOBゾーンに曲げてダブルボギー。ここから2連続バーディを決めて1打差に迫ってきた金谷の存在よりも、「自分でどう打っているかわからない。なんでこんなミスが出るのか。3番で左に打って、そこからは(左を)嫌がって右、右…」と苛立ちは内面に注がれた。
6番でチップインバーディを決め、続く7番(パー5)も獲って再び2打差としたが、9番の3パットボギーで1打差。1Wで1オンさせた11番をバーディとし、12番を終えて3打差にひろげたが、今度は15番(パー5)で1Wショットを右に曲げてこの日2度目のOB。ボギーとして、三たび1打差になった。
16番、17番と金谷のパットミスもあり、池田はショートゲームで粘ってなんとかリードを保って最終ホールへ。腹を決めた。「俺の中では1Wしかなかった。今までの(ミス)は帳消し。絶対にフェアウェイに打てると自信を持って打った」。相対した敵は、自分。会心のドライブは雨水を十分に含んだ芝をたたき、真ん中を割いた。勝負あり。逃げ切りを決める2オン2パットの支えとなった。
自ら何度も招いた危機を、精神力でひらりとかわしてつかんだツアー通算19勝目。AONをはじめ、「日本オープン」で複数回優勝を遂げたエリート選手の仲間入り(史上17人目)を果たした。
前半戦を米ツアーのスポット参戦に多く費やしながら、賞金ランキングは3位に浮上。トップの小平智との差は約768万円ほどだ。「これから賞金が大きな試合が続く。気が抜けない。2年連続賞金王もそうだし、まあやっと優勝も(今季)3つ目。あとひとつと言わず、二つくらい勝てるように」。4月の「マスターズ」をはじめ、“完敗”した4大メジャーのことも頭にある。「もちろん、やっぱりもう一回あそこに行きたい。すごく思っていることだし、自分で道を切り開かないといけない」
織田信長が天下統一を夢見た里・岐阜。全力で1Wを振り切ったその手には、刃物の名産・関市の刀匠が作った日本刀が優勝副賞として贈られた。「これをもらうために頑張った。もらったことがなかったから」。もう一度、日本一へ。そして世界へ。準備は着々と進んでいる。(岐阜県関市/桂川洋一)