44歳になった“西の横綱” 15年ぶりVへ首位
「学生時代は、“東の横綱は丸山、西は桑原”って言われていたんだ。自分は?“前頭”くらいだったかな…」。茨城県の美浦ゴルフ倶楽部で開催中の「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP in 霞ヶ浦」、2日目のラウンドを終えた藤田寛之が嬉しそうに言った。喜んだのは自身の2日連続となる「68」が理由ではない。予選ラウンドを終えてトップタイに立った桑原克典について話が及んだ時だ。
初日を4アンダーの4位タイで終えた桑原はこの日もショット、パットが噛み合い「66」をマークした。3番で2.5メートルを沈めた最初のバーディを呼び水に、5番からは2連続。「すごく良いものがやっと手に入った。10ヤードは距離が伸びた」というミズノのドライバー(MP CRAFT 513)も好調で、呉阿順(中国)と並び首位の通算9アンダーまでスコアを伸ばした。
2010年末にシードを喪失し、今大会は10月のチャレンジトーナメント「HEIWA・PGM Challenge III」を制して出場権を獲得。「昨日は久しぶりのツアーで手探りの状態だったけれど、今日は落ち着いてできた」と、わずかなチャンスを見事に活かしている。
今季はその下部ツアー暮らしが続いたが「チャレンジで頑張っている選手を見ると、彼らは根性もあるし、自分も影響を受けた。練習も昔よりもするようになったかな」と40代も半ばに差し掛かったところで、モチベーションに再び火が付いた。そしてもちろん、同世代の活躍が刺激的。学生時代からしのぎを削った藤田らは同い年。丸山茂樹は現在戦列を離れているが、何の縁か、今大会はテレビ解説を務めている。
藤田は今週水曜日、クラブハウスのレストランで桑原と再会した。
「久しぶりに会って『刺激になるな』って言われたけれど、もちろん自分にもすごい刺激になる。“カッちゃん”って20年くらい呼んでるわけだからね。自分は“ビッケ”ってずっと呼ばれ続けて…最近じゃ塚田(好宣)が頑張っているし…もちろん篠ちゃん(篠崎紀夫)も。(昭和)44年組は、みんな頑張ってるんだ。プロは結果の世界だけど、結果だけじゃない大切な部分もある」。
桑原は1998年「日本プロゴルフマッチプレー選手権プロミス杯」を最後に、通算3勝目が遠く「まだすんなり行くとは思っていない。今日まではのびのび出来ているけれど、明日からはまた別のプレッシャーがかかると思う」と慎重だ。しかし「でも、変なプレッシャーの中でも以前よりはうまくできるかもしれない」とも言った。
同級生からもらえるパワーは、年を重ねても同じ。次の一歩を踏み出させる、強い力だ。(茨城県美浦村/桂川洋一)