2013年 マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント

通算11勝目は選手会長・池田勇太の初勝利

2013/11/03 17:58
激闘を制した池田勇太は18番グリーンのインタビューで涙した。

兵庫県のABCゴルフ倶楽部で開催された国内男子ツアー「マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント」最終日。今季から選手会長に就任した池田勇太がシーズン初勝利を飾った。11アンダーの2位タイから出ると「67」をマークしたが、最終ホールでS.K.ホ(韓国)に通算15アンダーで並ばれプレーオフへ。しかし1ホール目でバーディを奪い、昨年の「キヤノンオープン」以来、ツアー通算11勝目を挙げた。

3日目を終えて単独トップに立っていたホが序盤に後退し、4番の最初のバーディで首位に浮上した池田。2メートルのパーパットを残した6番のピンチを切り抜けると、直後の7番から3メートル以内のチャンスをものにして2連続バーディ。後半も悠々とゴールテープを切るかに思われた。

しかし、今季ここまで縁に恵まれなかった勝利の女神は、今日も易々と微笑んではくれなかった。2打のリードを守ったまま迎えた終盤。17番でティショットを右へ曲げ、つま先下がりのラフから放ったボールはグリーン左へ。荒れたバンカーからの第3打はグリーンに届かず、ボギーとしてホとは1打差に。そして18番(パー5)では、残り199ヤード、右のセミラフから5番アイアンで打った第2打は「ボールが浮いていて(フェースの)上っ面に当たってしまった」と痛恨の池ポチャ。上がり2ホールの連続ボギーで自らプレーオフを招いてしまった。

それでも「(正規の)18番のボギーパットを打つ前に吹っ切れたものがあった」。

“嫌い”とまで言ってはばからない相性最悪のグリーン。朝霧がかかったこの日は「グリーンが暗く見えると、どうしても強く打ち過ぎてしまう」と1番ホールからキャップを脱いでプレーした。そして、この大の苦手コースをねじ伏せたのが73ホール目。再び18番に戻ったプレーオフ1ホール目で、今度は2オンに成功したショットはフェアウェイ上のディボットからだった。再び5番アイアンを握り、今度はクラブを強烈にカットに入れ、楽々の2パットバーディとした。

緑の芝に降り注ぐ雨を浴びながら、池田もまた涙にくれた。「今年はもう勝てないかと思った」。1999年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足以降、在任中の選手会長が優勝したのは2001年の片山晋呉、08年の宮本勝昌以来のこと。先行き不安な男子ツアー、ひとりのプロゴルファーとしての毎日に留まらない責務は、想像以上に大きかった。

試合の合間を縫って主催者をはじめ要人と会うため、全国を奔走。練習時間が忙殺された会長就任後の10か月を、池田は「移動が多くなって、座る時間が増えた」と表現した。体調も万全ではなく、この試合も初日から、脇から背中にかけてのストレッチをプレー中に繰り返すシーンが相次いだ。コース外での時間を決して言い訳にしようとはしない。ただ今日ばかりは「少なからず、その影響もある」と認めた。

「ツアーを盛り上げるために何か催しを考えたり、企画を作るというのは考え出したらキリがない。時間がどんどん足りなくなる。レールの上を歩いていくのは簡単だ。でも、新しい路線を作っていくのは大変」。自ら手を挙げて座った席とはいえ「やめとけばよかったって思うことも何度もある」。けれど投げ出すことは、高くそびえるプライドが許さない。

「やるって言ったんだから、やる。それがオレの流儀」。

41位に低迷していた賞金ランキングは、一気に10位まで浮上。そしてプロ初勝利の2009年から、これで5年連続となる勝利を挙げた。それでも過去の10勝とは、やはり一線を画すもの。「残り試合は片手(5つ)くらいしかないけれど、どうか応援してください!」。涙を拭いて、ギャラリーに放った言葉。そこには一選手としてだけではない、リーダーとしての自覚が溢れ出ていた。(兵庫県加東市/桂川洋一)

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