重永亜斗夢 アトムのおなかに詰まった苦悩
岐阜県のTOSHIN Golf Club Central Courseで開催中の国内男子ツアー「TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central」2日目。ツアー未勝利の25歳、重永亜斗夢が7バーディ、ノーボギーの「65」で回り、通算12アンダーとして4位タイに浮上した。
初日5アンダーの21位タイとまずまずの滑り出しを見せていた重永は、3番からの2連続バーディから勢いづいた。7番では花道からチップインバーディを奪うなどショートゲームも冴えわたり、ツアーでの自己ベストタイでのフィニッシュ。単独首位の藤本佳則とは5打差だが、賞金ランキング80位の現状を打破する大きなチャンスだ。
しかしホールアウト後の表情に、どうも元気がない。「今日は、ううん…。ゴルフの内容はすごく良かったけれど、自信がない。こんなスコアが出たのはビックリ」。
笑顔が乏しい理由は、思わしくない体調にある。今年は国内開幕戦の「東建ホームメイトカップ」で初日首位発進を切るなど幸先良いスタートを切ったが、シーズンも中盤に差し掛かると、かねてからの悩みであった胃腸の痛みに悩まされ始めた。夏場に病院で検査で受けると、潰瘍性大腸炎と診断された。ベテランの細川和彦も長年苦しんでいる難病だ。
「細川さんよりもかなり軽い段階」とは言うが、突然の腹痛におびえるような毎日が続く。チャレンジツアーでは練習ラウンドを急きょキャンセルせざるを得ないこともあったという。
トレーニングを続けているが、牛肉など避けるべき食品もあり、172センチ、60キロの体は、現在56キロとさらに細身になった。ウエスト76センチのパンツは、ベルトをしなければ腹との間に握りこぶしが入りそうなほど。プレー中にシャツの裾が飛び出し、試合中に注意を受けることもしばしばだ。「だから、自信がないんです。今のままではシードが獲れるとは思っていない。もうサードQTの登録もしている」
心の支えは家族。遠征が続くプロゴルファー。1月に生まれたばかりの愛娘の画像や動画が詰まった携帯電話を、穴が開くほど見て夜を過ごす。キャディバッグには写真の入ったタグをぶら下げている。
好スコアや結果だけが、ハートを満たしてくれるわけではない。もう一度、心の底から満足にゴルフができる日々を夢見て、人知れずじっと耐えている。(岐阜県加茂郡富加町/桂川洋一)