遊びの「延長線上」でスーパーショット 浅地洋佑は独自スタイルで3勝目
◇国内男子◇マイナビABCチャンピオンシップ 最終日(7日)◇ABC GC(兵庫)◇7217yd(パー72)
プレーオフを覚悟して迎えた終盤17番、スーパーショットは子どもの頃の“遊び”の要素が詰まっていた。左ラフからの第2打はピンまで残り180yd。自分から15yd先には木の枝が垂れ下がり、さらに50yd先には林がそびえていた。「僕は『あそこに打たなきゃいけない』というほうが気がラク。フェアウェイど真ん中からよりも楽しい」と浅地洋佑。スライス軌道で進んだボールはピンの手前6mにピタリ。バーディパットも決めて混戦を抜けだした。
「ショートコースでもネット越えのアプローチとかをやっていたので。その延長線上じゃないですけど」という一打でライバルたちから1打のリードを奪い、最終18番(パー5)も2オンからバーディを決めて「68」。通算16アンダーで2勝を挙げた2019年以来となるツアー通算3勝目を飾った。
首位から4打差以内に16人がひしめいてスタートした最終日は、3位から前半7番までに3バーディを奪いながら、8番(パー3)からの2連続ボギーをたたいた。一時的な後退から「今週のテーマが毎日60台で回ること。それをクリアしよう」と自分に喝を入れた。
身長169㎝の小さな身体は、1日のラウンド中に何度もアップダウンを繰り返す。ガッツポーズを繰り出したり、誰の目にもわかるほどガックリ肩を落としたり。「僕は安定を求めているんですけど」と苦笑するが、表情豊かに全国を回る。
トップ選手にパワーで劣ることを自覚し、「僕みたいなプレースタイルでは、長いコースでは(活躍を)あきらめる」と潔い。プロ入り直後にシードの獲得、喪失、復帰を経て「距離が短い、狭いというコースでは切り替える。そこで頑張る」という独自の生き残り方を模索してきた。
ジュニア時代から定評のあったチッピングを極めるべく、今年はPW以外に4本のウェッジをバッグに入れ「そこに頼ろうというスタイル」を確立。7番では芝と砂が混在するライからロフト62度のウェッジでスピンをかけ、ピンそば1mにつけてバーディにした。2勝した2年前も24試合の出場で予選落ちが7回あったが、今季はここまで23試合で4回。「今年は安定しているほう。トップ15の数も増えた」と成長を実感している。
1カ月前に「一度やってみたかった」と髪の毛を赤く染めた。茶髪に、金色に銀色…に続くヘアスタイルは「いろんな人にめちゃくちゃイジられて。周りの評判がよろしくない」らしい。「次は何にするか考えます!」。ツアーを彩り豊かにする。(兵庫県加東市/桂川洋一)