左打ち天国って本当?カナダのゴルフ量販店に行ってみた
13歳の少年は悩んでいた。ときは1983年。プロゴルフ界には左打ちの有名選手はほとんどおらず、周囲の大人たちは左打ちであることが将来の成功を阻むと言う。そう言われるだけで、ネガティブな気持ちになるのも確かだった。思い余った少年は、ジャック・ニクラスへ手紙を書いた。“左打ちから右打ちに変えた方が良いのでしょうか?”
ニクラスは少年に返事を寄越した。「自然なままの左打ちを続けなさい。そして一生懸命練習しなさい」。カナダ人として、また左打ちの選手として、初めて「マスターズ」を制したマイク・ウィアのエピソードだ。
実際、カナダは左打ち天国だという話を聞く。その理由は、カナダ人はみな幼少から国技であるホッケーをするためで、ホッケーでは右利きの人は体の左側(テニスでいうバックハンド)でスティックを振る。ゴルフでいう左打ちに近い動作になるからだ。
“百聞は一見に如かず”ということで、トロント近郊にあるゴルフ量販店「Golf Town」を訪ねてみた。いったい、どれだけ左打ち用のクラブがあるのだろうか?
入り口脇には広大なパッティングスペースがあり、壁一面にパターが陳列されている。見てみると、右打ち用と左打ち用が無造作に並べられている。左打ち用コーナーのような場所があるわけではなく、半分よりはやや少ないくらいだが、メーカーごと、モデルごとに、右打ち用と左打ち用が取りそろえられている。そこで球を転がしていた親子も左打ちだった。
1Wやアイアン、ウェッジも同様に右打ち用と左打ち用が、同じくらい陳列されている。同店のマネージャーであるブロック・スピアー氏によると、仕入れるクラブの35%が左打ち用とのこと。同店の販売員は14人いるが、そのうちスピアー氏を含む5~6人が左打ち。試打スペースで1Wをテストしていた別の客も左打ち。ブーツを履きながら打っているところが、なんともカナダっぽい。
スピアー氏によれば、カナダ国内でもモントリオールやニューブランズウィック州などの東海岸に行くにつれて、左打ちの割合はさらに高くなり40%ほどになるという。
ウィアの時代、左打ち用のクラブを入手するのは簡単ではなかったそうだが、今ではカナダはまぎれもなく左打ちの天国だ。左打ちで将来に不安を感じている方はぜひ一度、カナダを訪れてみてはいかがだろう。(カナダ・トロント/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka