2016年 ドイツバンク選手権

世界選抜vs米国選抜 PGAツアーキャディたちの真剣勝負

2016/08/31 08:06
松山英樹のバッグを担ぐ進藤キャディ(左端)は、隣のマキロイのキャディとともに世界選抜の一員としてキャディマッチに出場した

米国男子ツアーは2週前にレギュラーシーズンを終え、プレーオフシリーズに突入。そのポストシーズン期間中に、国のプライドをかけた、ある対抗戦が行われた。出場したのはプロゴルファーではなく、彼らをサポートするキャディたち。「ワールド・キャディ・マッチ」と題された第1回大会が29日(月)に開催された。

米ツアーを仕事場にする各国のプロキャディが中心となって発足した大会は、テキサス州の法律事務所がメインスポンサーとなり、各ゴルフメーカーなども協賛。プレーオフ初戦「ザ・バークレイズ」の行われたベスページ州立公園(ニューヨーク州)から、今週2日(金)に開幕する第2戦「ドイツバンク選手権」の会場TPCボストン(マサチューセッツ州)までは自動車で移動する選手、関係者が多いため、その道すがらコネチカット州のゴルフコースが会場になった。

それぞれ22人ずつが出場した世界選抜チームと米国選抜チームの対抗戦。「ライダーカップ」、「プレジデンツカップ」に倣い、ダブルス(ティショットを全員が打ち、2打目からは交互に打つ形式)とシングルスのマッチプレーを実施した。1日で全選手が2マッチをプレー。試合前夜の29日(日)にはコース近くの豪華リゾートホテルで、華々しく組み合わせ抽選会まで行われた。

この第1回大会に、松山英樹のバッグを担ぐ進藤大典キャディが日本からただ一人出場した。進藤さんは学生時代に東北福祉大ゴルフ部に所属し、宮里優作岩田寛とはチームメイトだった経歴の持ち主。ユニホームの赤いポロシャツをまとい「世界選抜」の一員として戦った。

午前中のダブルスでは、ロリー・マキロイ(北アイルランド)の相棒、J.P.フィッツジェラルドとタッグを組んだ。対戦相手のひとりは若かりし日のタイガー・ウッズを支え、ここ十数年はジム・フューリックのキャディとして知られる、マイク・コーワン(愛称はフラフ)。ことしで68歳の大ベテランが相手とあって、確実にポイントを奪いたいところだったが、大苦戦を強いられた。

一番左のマイク・コーワンは先日「58」を出したジム・フューリックのキャディ。周囲からは「きょうは57が出るぞ!」と野次も飛んだ

序盤のもたつきで5番までに3ダウンとなると、仲間のフィッツジェラルドがイライラを募らせ始めた。ボスのようにアイアンを池に投げ込んだり、フェアウェイウッドをへし折ったりするようなことはなかったが、グリーン周りでウェッジを放る場面もあった。

進藤さんは途中でアプローチミスを激怒され、「J.Pは普段の試合ではすごく冷静なのに…」と、思わぬギャップに委縮気味だったが、1ダウンで迎えた最終ホールで7mの強烈なフックラインを沈めてバーディを奪い、マッチをドローとすると、フィッツジェラルドは大喜び。手のひらを返したように「ダイスケは最高にいい選手だった。とても意義のあるイベントで楽しかったし、来年もまたぜひ出たい」と興奮。ゴルフは性格が出る。いつも冷静沈着にマキロイをサポートしている男の本性は、実はこんなだった、ということだ。

結局、午後のシングルスマッチプレーを終えて、世界選抜は7対26と大敗した。「想像していた感じと少し違いましたね。雰囲気がみんな“ガチ”で…」と進藤さん。熱戦の本気度もさることながら、集まった協賛金などはNPO団体に寄付もされる本格的な大会となった。

「アメリカでたくさんの先輩キャディさんたちと交流できると、情報交換にもなるし、とても勉強になります。こういう機会を作ってもらって、招待していただいて光栄でした。お休みをくれた英樹にも感謝したいですね」と話し、一足先に次戦の会場に向かった松山の後を追った。(コネチカット州ノーウィッチ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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