2016年 AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ

世界ランク447位から 39歳テーラーが家族愛でつかんだ11年ぶり勝利

2016/02/15 13:01
家族の支えを受けて11年ぶりの優勝を飾ったテーラー(Robert Laberge/Getty Images)

米国男子ツアー「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」最終日。首位から出たフィル・ミケルソンが3シーズンぶりの復活優勝に挑んだ中、1打差で優勝をつかんだのは思わぬ伏兵だった。最終18番で決めればプレーオフという1.5mのパットを外して膝に手をついたミケルソンと対照的に、この日「65」を叩き出し50分近く前にホールアウトしていたボーン・テーラーは、信じられないといった表情で11年ぶりの勝利の瞬間を味わった。

6打差を追って最終組の4組前でスタートした。「10位以内に入って、来週の出場権を得ることが目標だった」とテーラーは言う。現実的な目標だった。

前週はコロンビアのボゴタにいた。下部のウェブドットコムツアーの第2戦に出場したが、大会初日に食べた昼食があたって、夜には嘔吐と下痢が止まらなかった。翌金曜日にコースに行ったが、数ホールをプレーして無理だと悟り途中棄権。そのままペブルビーチへと向かった。

2004、05年とPGAツアーで2勝を挙げたが、12年にシードを落とすと、以降はウェブドットコムツアーが主戦場となった。今大会前の世界ランキングは447位。今週は「過去のPGAツアー優勝者」という枠を使ったが、月曜日になるまで出場できるか分からなかった。

「今、ここに座っていることが信じられない。もうあんなことは2度と起きないんじゃないかと思っていた」。この勝利で世界ランクを100位に上げたテーラーは、優勝会見でそう語った。来月には40歳になる。前回優勝したのは10年以上前だ。「他の仕事を見つけようと思ったことはなかったの?」自然とそんな質問が出た。

「そこにいる美しい女性が僕の支えだよ」と、テーラーは会見場にいた1人の女性を指さした。妻のレオットさんだ。「彼女と出会ったときから、特別なものを感じていた。小さな子どもにも恵まれたし、すべては彼女たちのため。良いときも悪いときも、彼女はいつもポジティブで僕をがっかりさせない。僕が落ち込んでいたら、背中を押して応援してくれるんだ――」。

テーラーは14年8月に釣りに出てボートが転覆し、溺れそうになったことがある。「岸まで泳いだ10分間は永遠に感じられた。あの事故で人生が変わった。妻がいて、子どもがいて、家族がいることに心から感謝できるようになったんだ。人生は自分だけのものじゃない。彼女たちは僕のことを必要としているし、そのために生きるんだ」。

契約するテーラーメイドが展開する新クラブ『M1』のキャンペーンはFA“M1”LYと表記され、M1をFamily(家族)という単語の間に挟んでいる。米国では男性から女性にプレゼントをすることが多いというバレンタインデーに、家族愛に満ちあふれた優勝物語が誕生した。(カリフォルニア州モントレー/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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