2015年 マスターズ

21歳の挑戦再び スピースが完全優勝に王手

2015/04/12 12:03
次なる21歳の挑戦。J.スピースに凱歌は上がるか (Jamie Squire/Getty Images)

グリーンジャケットをその身にまとわんとしていた2011年、ロリー・マキロイ(北アイルランド)は21歳だった。圧倒的な飛距離を武器に試合を支配し、後続に4打差をつけて迎えた「マスターズ」最終日。しかしマキロイは後半10番でティショットを大きく左に曲げてトリプルボギーを叩くなど、サンデーバックナインで大崩れして逆転負けした。

あれから4年。マキロイがメジャーで既に4勝を挙げ、キャリアグランドスラムをかけて臨んだ今年の大会で、新たな21歳が同じ試練を味わうことになる。

初日から単独首位を突っ走るジョーダン・スピースは、第2ラウンド終了時の最少ストローク記録「130」を樹立し、ムービングデーには第3ラウンド終了時の最少記録も「200」に更新。1997年にタイガー・ウッズが記録した72ホール最少ストローク「270(18アンダー)」の更新、1976年大会のレイモンド・フロイド以来となる完全優勝も視野に入る中、2位につけたジャスティン・ローズ(イングランド)とは、4打差だ。

ムービングデーに周囲が60台を連発したことを考えても、この日のスピースの「70」は、本人は十分に満足できるものだった。特に終盤17番で得意のショートゲームにミスが出てダブルボギーを叩きながら、続く最終18番ではグリーン右のパトロンエリアからパーをセーブ。連続したピンチを冷静に処理した。

「お昼にランチを食べている時、みんなのスコアが伸びていて、きょうも攻めやすいピンポジションなんだろうと思った。でも僕はアンダーパーで回れればいいだろうと考えていたんだ」

首位タイから出たバッバ・ワトソンに競り負けた昨年大会を振り返り、スピースは今大会開幕前から「我慢」というフレーズを繰り返してきた。「マスターズは僕らのスポーツにとって最高の週。去年は苦い経験をした。今年はリベンジをしたいってずっとやってきた。でも、まだ道のりは長い」

18年前、21歳でマスターズを制したタイガー・ウッズは、今週「オーガスタは何が起こるか分からない」と言い続けたが、現状は自身の時よりもずっと、今回のスピースの方が大きくアドバンテージがあるという見方だ。

「彼は僕の時よりも有利な立場にある。僕の時は2日目を終えて2位とのリードは3打だった(スピースは2日目を終えて後続に5打リード)。土曜日にすごくいいプレーをして『65』を出したけれど、彼はとにかく堅実にプレーすればいい。十分な飛距離もあるし、温かくて、どの選手も、どのパー5でも2オンが可能だ。パー5で伸ばして、ボギーを避ける。グリーンに乗らなくても安全なところに外せばパーを拾えるはずさ」

ウッズの言う「堅実なプレー」。それこそが今年の21歳の大きな武器だ。「あしたは前のフィルの組の声援はすごいだろうね。タイガーとロリーの組の声援もどこでも聞こえるはず」。マスターズのサンデーバックナインを、僕は知っている――。スピースの拠りどころは20歳の経験。4年前のマキロイとの、ひとつの違いだ。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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