マキロイが語った勝因 “プロセス”と“スポット”
ロリー・マキロイ(北アイルランド)が、キャリアグランドスラム達成の序章となる3個目のメジャータイトルを、英国ホイレイクにあるロイヤルリバプールで行われた「全英オープン」で獲得した。
マキロイの父・ゲリー氏が10年前、3人の友人たちと共に“自身の息子が26歳になるまでに、全英で優勝する”ことに懸けた400ポンド(約7.2万円)のオッズは500倍。出来のよい息子によって、それは20万ポンド(約3,600万円)の大金へと化けた。
4日間通算17アンダーで終え、一度も首位に並ばれることなく後続に2打差をつけて逃げ切ったマキロイが、トップで終えた初日に明かさなかったことがある。今週プレーする上で大事にしていた2つのキーワード。戦い終えた優勝会見で照れながら明かしたそれは、「“プロセス”と“スポット”」だった。
「ロングショットでは、良い決断をして、良いスイングをするという“プロセス(過程)”に集中した。もしスイングに関してチェックしているポイントがあったなら、結果を気にせずそのポイントに集中する。基本的に、結果がどうなるかは考えていなかった。それから、“スポット”というのはパッティングに関して。グリーンでは、狙う“スポット”を決めて、毎回その上を球が通るようにした。カップに入れようとは考えなくて、もしそれがカップに入れば良いことだし、入らなかったとしても、また次のホールで同じことをする。“プロセス”と“スポット”。その2つを今週ずっと自分自身に言い聞かせていた」。
スタッツにも表れているが、今週のマキロイの戦いで印象的だったのは圧倒的な飛距離(平均327.8ヤード/1位)と抜群のパッティング(平均1.53回/ホールで4位タイ)。風が穏やかだった初日に飛び出したマキロイは「過度にアグレッシブだとは思わない。この風の方向と強さなら、ドライバーという選択肢は悪くない」と自身のプレーを振り返っている。
最終日の16番でティショットを打ち終えた後、マキロイはギャラリーの中の一人を指し示し、その男は警備員に取り押さえられた。「彼は今日一日、ずっと僕にうるさく言ってきていたんだ。そして、16番ティではダウンスイングでわざと咳払いをした。(見なかったけど)誰がやったかは分かっていた。だから、つまみ出して貰ったんだ」。アクシデントにも冷静に対処した。
06年のホイレイクで、タイガー・ウッズは4日間で1回しかドライバーを使わず、今週も多くの選手がティショットをバンカー手前に刻む中、マキロイは自身の“プロセス”と“スポット”に集中して、誰も届かない領域で完全優勝を成し遂げた。勢いに乗ったマキロイを止めるのは容易ではない。そのことを知らしめた圧巻の勝利だった。(英国ホイレイク/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka