2014年 マスターズ

「80」→「71」の意地 初の屈辱で見せた松山英樹の“熱”

2014/04/12 10:45
松山は米ツアーではプロ転向後初の予選落ち。メジャーでも6試合目にして初めて決勝進出を逃した(Harry How/Getty Images)

今年、松山英樹がオーガスタナショナルGCの2日間で記録したのは通算7オーバーの151ストローク。カットラインに2打及ばず、今季米メジャー初戦の「マスターズ」は予選落ちという結果しか残らなかったが、そこには確かに難コースへと立ち向かう151回の決断と実行が刻み込まれていた。

グリーンの速さに戸惑い、39パットの果てに「80」を叩いた初日。2日目の1番では15メートルのファーストパットを50センチに寄せてのパー発進。だが、“よし、行ける!”という心の高鳴りは、バーディが欲しい2番(パー5)のティショットを大きく左へとフックさせた。

今週初めてフェアウェイを外したティショットは、林の中のカート道に止まり、フェアウェイに戻すのに2打を要す。4打目はグリーン奧のパトロン席に突っ込み、5打目のアプローチは手前のカラーで止まってダブルボギー。一瞬で天国から地獄へ突き落とされるようなオーガスタの厳しさを味わった。

「昨日より良くなかった」というショットは、64.3%に落ちたフェアウェイキープ率がものがたる。それでも、4番(パー3)ではグリーン奧の左足下がりのラフから1メートルに寄せ、7番ではグリーン右手前のバンカーから、ピンに向かって傾斜する3ヤード幅のグリーンに落としてパーを拾っていく。

アーメンコーナーに入り、予選ラウンドで難易度1位の11番、同2位の12番を共にパーで切り抜けると、いよいよ松山は加速した。13番、15番とバック9の2つのパー5は共に2オンに成功してバーディ奪取。池越えの16番(パー3)では、左奧に切られたピンを右サイドの傾斜を使ってピン下3メートルに戻し、13番からの4ホールで3つ目のバーディを奪い取った。

残り2ホールで通算6オーバーは、予選通過にあと2ストローク。オーガスタには、上位のリーダーボードはあっても、カットラインに関する情報はない。「4オーバーならチャンスはあると思ってプレーしていた」と松山は言う。アイゼンハワーツリーの無くなった17番でも右下6メートルにつけたが、このバーディパットは無情にもカップの左をすり抜けた。

最終18番で“奇跡”に近づいたのは、同組で回ったブラント・スネデカーの方だった。グリーン右手前に切られたピンに、中段の傾斜を使って戻した2打目がスルスルと近づいていき、カップに吸い込まれる寸前で動きを止めた。そのどよめきとは対照的に、松山は2打目をグリーン右サイドのバンカーに入れ、最後は静かにボギーで終えた。

ホールアウトしたスネデカーが松山の肩を叩き、声を掛けた。それは、この日の好プレーを称えたものだったに違いない。この日アンダーパーで回ったのは97選手中21人。パット数は昨日の39から30へと改善し、松山が記録した「71」は、2日目の平均スコア74.082を3ストローク上回るものだった。

「予選落ちしたら悔しい以外にない」。良い結果も悪い結果も受け入れると話していた松山の言葉はシンプルだった。「自分の中でやってきたことが結果に繋がらなかったけど、準備がダメだとも思わないし、そう思いたくもない」。

この2日間の総括は「まだ考えられない」と松山は言った。プロ転向後、米ツアーで初めての予選落ち。最大の目標とする「マスターズ」で、メジャー初の予選落ち。今後のスケジュールを問われ「多分、ほとんど出ると思います」と即答した言葉の“熱”に、メラメラと燃える闘志が感じられた。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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