2013年 WGC HSBCチャンピオンズ

中国進出したPGAの狙い…湧き上がる焦燥感

2013/11/04 20:34
PGAチャイナの発表会見には中国メディアが大挙詰めかけ、関心の高さをうかがわせた

「WGC HSBCチャンピオンズ」の3日目が終わり、メディアセンターで原稿を書いていると、大会スタッフが1枚の紙を持って回ってきた。「明日12時、ティム・フィンチェムから特別なお知らせがあります。是非、会見にご出席ください」。スポンサー契約の延長でも発表するのだろうかと、当時は軽く受け流していた。

日曜日の11時過ぎ、石川遼藤田寛之川村昌弘の3選手がコースに出てプレーをしている。どうしようかと迷ったが、メディアセンターに戻ることにした。時間ギリギリに戻ってみると、会見場はスーツを着た偉そうな面々と、多くの中国メディアでごったがえしている。その人混みをかき分けて前に進むと、ひとつのロゴが目に飛び込んできた。それは、見慣れたPGAツアーの青いロゴマークだったが、その下に「CHINA」の文字が力強く刻印されている。一瞬、鼓動が速くなったのを感じた。

この会見に出席したのは、PGAツアーのティム・フィンチェムコミッショナーと、中国ゴルフ協会のジャン・シャオニン副主席、中国オリンピックスポーツ産業のサン・リピン代表。フィンチェムのいつも通り冷徹な表情と、中国の重鎮?2人の額にうっすら汗をかいた興奮気味の面持ちが対照的だった。

この場で発表されたのは、来年2014年から中国に新しいプロゴルフの国内ツアーが発足し、「チャイナ・ツアー/PGAツアーチャイナシリーズ」として開催されるということ。初年度の試合はすでに世界レベルのコースを有している北京、上海、海南、広州、深?といった都市を中心とした12試合。来年初頭に海外にも門戸を開いた予選会を行って出場選手を決め、年間の成績優秀者は米国PGAツアーの下部ツアーにあたる「ウェブドットコムツアー」への出場権を獲得できる内容で、現在のPGAツアーカナダや、PGAツアーラティノ・アメリカと同様のシステムになるという。

PGAの進出で来年から国内ツアーが整備される中国。グァン・ティンラン級の逸材が続々と発掘されるかも(写真は2013年のVanaH杯オーガスタ)

すでに中国では、ワンアジアツアーや、欧州ツアーが年間数試合トーナメントを行っており、そこに新たにPGAツアーが割って入った形になる。だが、フィンチェムはその懸念を会見で一蹴した。

「ワンアジアや欧州ツアーが(中国で)共催イベントを開催しようという意欲には、なんの影響も与えていない。中国に限って言えば、彼らがその動きを加速させることは、プラス要因にもなるだろう。それに、彼らから何物も奪うものでもない」。

この取り組みによって中国国内のゴルフ熱をさらに上げ、新たな選手とファンを発掘し、ひいては世界のゴルフ人気拡大を図ろうというのがPGAツアーの狙いらしい。フィンチェムは「歴史的にみても、はじめにスター選手が現れる。次に大きな成長がやってくる。アーノルド・パーマーが出てきた1960年から、これまで40~50年も成長を続けているアメリカも同じ例だ」と話した。

大会運営は中国オリンピックスポーツ産業が行い、この試合はワールドランキングも付与されるという。当然、2016年、2020年のオリンピック出場選手の選考にも関わってくる。

まだ始まってもいないチャイナ・ツアーだが、数年後にはどんな発展を遂げているだろうか? 1からのスタートであらゆる可能性があるだけに、現在の日本ツアーの不透明な先行きと比較すると、焦燥感に駆られてしまう。

先週、中国・上海で行われた「WGC HSBCチャンピオンズ」は、世界標準の大規模なコースと、ワールドランキングトップ選手が集結するフィールドだった。今の日本では、残念ながら見当たらない舞台だった。(中国・上海/今岡涼太)

2013年 WGC HSBCチャンピオンズ