米ツアー開幕戦で見えた、松山英樹&石川遼の2014年展望
松山英樹が3位タイ、石川遼は21位タイで終えた今季の米ツアー開幕戦「フライズドットコムオープン」。それぞれ、フェデックスカップポイントは134点と48点を獲得した。昨年のフォールシリーズ分として今季は6試合多く加算対象となり、その分を考慮すると今季のシード獲得となる125位のポイントは430点ほど(昨年は369点)と想定される。いずれによせ、2人とも好スタートを切ったといえるだろう。
今季から旧フォールシリーズの優勝者にはフェデックスカップポイントが満額支給されるだけでなく、来年4月の「マスターズ」出場権も与えられる。松山は世界ランキング(年末時点で50位以内/現在29位)での出場が濃厚だが、石川にとっては6年連続となるオーガスタ参戦を自力で決めたい思いも強いはず。ジョージア(マックグラッドリークラシック)、メキシコ(OHLクラシックatマヤコバ)への出場準備も進めているという石川の今後のスケジュールに注目だ。
松山は、プロ転向後に出場した米ツアーは7試合すべてで予選通過を果たし、トップ10入りは先週で3回目(米国でもう1つの指標として使われるトップ25は全試合クリア)。安定したロングゲームを武器に、着実に成績を残している。課題としているのはアプローチ、パターのいわゆるショートゲームだが、ショットの精度が高いだけに現時点ではその弱点も致命傷にはなっていない。米国の芝に慣れ、米ツアーの選手たちから新たな技術を吸収していけば、さらに高いレベルでの戦いが期待できる。
その風貌からは意外に思われるかもしれないが、松山は実に繊細で慎重だ。先週はドライバーの新シャフトをテストしてその感触も良かったが、他のクラブとのつながりが未知数として本番での使用は控えた。また、「プレジデンツカップ」では、シングルス戦の勝敗が懸かった大事な15番ホールで2打目をバンカーに入れたが、その週に副キャプテンの丸山茂樹から教わっていたスピンをより多くかけて止めるショットを封印。「自分の中ではベストな選択」というこれまでのショットでピンをオーバーさせてしまった。
裏を返せば、完全に自分のものとしてコントロール可能になるまでは、グラブもスイングも本番の勝負に持ち込むことはしない。ここに松山の安定した戦績の理由が垣間見えるだろう。
一方で、昨シーズンは不調に悩み、下部ツアーとの入れ替え戦まで経験した石川が得たのは、技術とともに精神面での充実だ。アマチュアで国内ツアーを制してから、順調にステップを上がって来た石川は、アメリカへ渡った昨シーズン、「中学生の頃以来」という予選通過を見据えた戦いを強いられた。そこから這い上がってくる過程で、くじけない心や、冷静で客観的な視点も身につけた。
球を自在に操り、以前のようにドライバー一辺倒で攻めていくわけでもない。コースを縦横無尽に使ってマネジメントするゴルフは、何手も先を読む石川の思考がうかがい知れ、観戦していて実に面白い。そこに、強靱な精神力がプラスされれば、石川の今シーズンの戦いも大いに楽しみだといえるだろう。
「またベガスで英樹と一緒に練習ラウンドをする予定です」と言う石川。松山英樹と石川遼というタイプの違う若者2人が、米ツアーで優勝争いを繰り広げる日も決して遠くはないと感じた今季米ツアー開幕戦だった。(カリフォルニア州サンマーティン/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka