冤罪に苦しむ、キーガン・ブラッドリー
世界の一流舞台で何もやましいところ無く戦っているアスリートが、コース場でファンから「詐欺師」と呼ばれ、一部のメディアでも同様に揶揄される。そんな状況がどれだけ辛いものなのか?2011年に全米プロを制して、ベリーパターでの初のメジャー優勝者となったキーガン・ブラッドリーは、真剣な表情で訴える。
「ほんとうにタフなんだ。なぜ人々がそんなことを言えるのか、まったく理解できない。とても厳しい状況だし、正直言うとおかしくなりそうだ。直す準備はできている。でも、この話題はあと最低数年は続くだろう。USGAはこの提案をする前にもっとプレーヤーのことを考えて欲しかった。僕や他の何人かの選手にとって、とても難しい状況なのだから」。
先週末、PGAツアーのコミッショナー、ティム・フィンチェムは、USGAとR&Aが提案しているアンカーリング禁止のルール改正について、異議を表明した。その主たる理由は、アンカーリングが選手にとって有利だという実証データが無いということ。これについてブラッドリーは、「まったく驚きはない。フィンチェムもPGAツアーもいつも選手側に立ってくれる。僕のツアー、自分がプレーするツアーが味方になってくれてとても誇らしいし、気分がいいよ」と顔を上げた。
USGAとR&Aは昨年11月に新ルールの提案を行い、同時に業界から広く意見を求めていた。そのヒアリングに当てた期間は2013年2月末まで。PGAツアーは選手の意見を集約して、その期限ぎりぎりに言葉を発した。PGAだけではない。新ルールの提案直後に27,000人の会員にアンケートを採り、63%が反対だったというPGA of America。また、ゴルフコースオーナー協会も同じくこの新ルールに疑問を呈している。
予定では、ヒアリング期間を終えた2013年の春に最終決定をすることになっている。しかし、これだけ反対意見が出てくると、果たしてどのような結末で落ち着くのか、想像するのは難しい。もしかしたら、PGAツアーとヨーロピアンツアーで別の基準を採用する、なんてことになる可能性もゼロではない。
いずれの結論が出るにせよ、今はまだルールは何も無い状態。現時点で風評被害を受けているアンカーリング利用プレーヤー達には、痛く同情してしまう。(米国フロリダ州/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka