米国男子ツアー

PGA Tour Rookie / Ryo Ishikawa(6)将来へのスイングチェンジ

2013/02/12 08:50
ツアー本格参戦1年目の始まりは試行錯誤。石川遼は新しいスイング改造に着手した。

米国男子ツアー(PGATOUR)に本格参戦する2013年シーズンの直前、石川遼は新スイングの模索を始めた。日本ツアー史上、ダントツの若さで10勝を重ねながらも、年がら年中「スイングが大事」、「スイングを固めたい」と繰り返してきたから、スイング改造に取り組むことにもさしたる驚きはない。しかし今回ばかりは、そのきっかけがこれまでと違っていた。

1月初旬、石川は病院でMRI検査(磁気共鳴画像装置)を受けている。いまのところ、選手生命にかかわるような大きな故障ではないことが分かり一安心しながらも、やはり腰、股関節にかかる負担は将来のことを見据えれば、変化が必要とされた。

取り組みを始めたのが、1月初旬。自身の初戦「ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション」のわずか10数日前だ。これまでの石川のスイングと言えば、右サイドに上半身と下半身を一斉に引き込み、左サイドにかけて一気にぶつけるものだった。だが下半身からの回転軸がぶれながら体重を移動させることで、腰椎に負担がかかっていたという。

勢いよくまわるコマをイメージすると、もう倒れんというとき、コマを支える“柱”はグラグラと揺れ、いずれはバタバタと地面の上を暴れて速度を落としていく。模索するのは回転軸を安定させ、効率良く力を伝えるスイング。まずは膝などの下半身の動きを極力抑えることがターゲットだ。一方で、下半身の動きを“止める”ことで、飛距離を落とすわけにもいかない。そこは固定した下半身に対し、動き続ける上半身との“ひねり”によってパワーを生む。上半身と下半身の捻転差は以前のスイングよりも大きいという。「ひねる動きを続けながらインパクトを迎えたい」というのが石川の理想だ。

ゴルフを始めたジュニア時代から、日本で輝いた時代のスイングを「10年、やってきた動き」と表現する石川。だからこそ、今回の改造は一筋縄ではいかない。

自身の今季初戦から2試合は下半身とともに、腰の動きも抑えることを心掛けながら、バックスイング、ダウンスイングの形を注視してラウンド。3戦目の「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」では、動きにリズムを加える、という段階を踏んだ。同大会では開幕前日の練習ラウンドが印象的。全体的に力感が抜け、十分な飛距離を生んだショットを見せていた。

新しいスイングはまず練習場で、理想の形の輪郭を作る。ただ石川が言うように「平らな所で打つことができても、コースではそうはいかないし、試合中はどうしてもフェード、ドローと打ち分けなければいけない場面もある」。長い先を見据えた改造には、もちろん焦りは禁物。残さなければならない結果と、自分の理想とを、すり合わせながら本格参戦1年目のシーズンを戦っている。(アリゾナ州スコッツデール/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw