“裏開催”トーナメントの雰囲気って・・・?
石川遼の緊急参戦を受けて、急遽フォーカスすることになったプエルトリコ。北は大西洋、南はカリブ海に面したこの島で行われるトーナメントは、今年が開催5回目。しかしながら、米フロリダ州で開幕した世界選手権シリーズ「WGCキャデラック選手権」と同週開催とあって、“普段の”試合とは一風変わった雰囲気も感じずにはいられない。
「プエルトリコオープン」の会場であるトランプインターナショナルGCは、大西洋に面した首都サンファンの国際空港から東へ自動車で約30分のリゾート地にある。もちろん日差しは強く、観戦に日焼け止めやサングラスは欠かせない。朝から晩までひっきりなしに吹く海風こそが、最も手ごわい難敵のようで選手たちは頭を悩ませる。ショットはもちろんだが、1メートルのパットであっても石川は「風で体が反応して打ってしまう。割り切って打たなければダメですね」。グリーンは比較的止まりやすいが、不規則に転がる芝質もあって、最後まで気を抜けない。
また、突発的に降る横殴りの雨も特徴のひとつ。けれど、上空の雲の動きも速いので、いきなり止んだりもする。この日は午後3時前。石川組が11番(パー3)のティグラウンドに立った途端に猛烈な雨にたたられたが、グリーンに上がった際にはすっかり晴れ。傘の無い人々はみな、風上に向けていた背面だけがびっしょりと濡れたカッコ悪い姿で、再び太陽の下を歩き始めた。
ちなみにプエルトリコは米国自治領だが、20世紀初頭までスペインの植民地だっただめ、公用語は英語ではない。空港から街中の案内も、スペイン語がメインで、英語があくまで補足的に付け足されている。(今回の取材申請後に大会サイドから返信されてきたプレス用の案内はすべてがスペイン語で、面食らった)
そしてビッグトーナメントの“裏開催”とあって、やはり最高の盛り上がり・・・とはいかないのが正直なところ。プレスルームもクラブハウスの2階に、こぢんまりとある。キャデラック選手権が開催されるTPCブルーモンスターatドラールのクラブハウス内にある講堂のような一室と比べると10分の1以下の広さに感じる。室内に用意された椅子は51脚あったが、半分は空席。世界中に写真、映像配信をしているGetty Images のカメラマンは、ドラールに5人配置しているのに対し、こちらは1人だそうだ。
予選ラウンドで石川はロコ・メディエート、“カリビアン”のジョナサン・ベガス(ベネズエラ)、今大会世界ランク最上位の石川のパーティは予選ラウンドのメインの組のひとつといえるが、帯同したギャラリーは終始50人前後(のべ人数はもっと多いだろうが)、といったところ。思わず石川も「思ったよりも少なかった・・・」と苦笑いを浮かべていた。
しかしながら、それぞれの選手がPGAツアーでの成功の足がかりにしようと、特に若手は“下克上”を狙って戦っている。数週間前までキャデラック出場を狙っていた石川のモチベーションが衰えず「いろんなコースでプレーしてきたけれど、また違った分野と言うか、違うカテゴリーでプレーしている感じ。新鮮な気持ちでやっている」と話す要因のひとつは、一変した環境にもあるかもしれない。
そういえば、この日のラウンドの終盤、中年女性ギャラリーに「RYOって、どう発音すればいいの?ヨー?それともロー?」と聞かれた。石川が米ツアーに参戦を始めた2009年当初はしょっちゅうだった久々の質問に、こちらも改めて新鮮な気持ちを覚えた。(プエルトリコ・リオグランデ/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw