初優勝のウィニングパットは見なかった 古江彩佳と母の絆
◇米国女子◇トラストゴルフ スコットランド女子オープン 最終日(31日)◇ダンドナルドリンクス (スコットランド)◇6584yd(パー72)
古江彩佳が18番グリーンに上がるのを確認すると、ウィニングパットを打つ前に体の向きをくるりと変えた。グリーンを囲む人垣の一列うしろで、古江の母・ひとみさんはひっそりと娘の勝利を確信する。「信じているので、見ないんです」。バーディパットを沈めて巻き起こる歓声を耳にしてから、再びグリーン上の娘の姿を目に焼き付けた。
昨年末の予選会を突破して、今季から米ツアーに参戦。娘の転戦生活に付き添って、食事の用意や身の回りの手伝いをしている。優勝前夜のメニューは、豚キムチとサーモンのムニエル。現地で食材を調達して、やりくりしながら母の味を食べさせる生活にも「楽しんでいるので、苦と思わないです」と笑う。
試合中はプレーを見てついて歩くが、パッティングの瞬間は見なくなった。「ルーティンです、外れたらいけないので」。優勝争いの18ホールも娘が打ってくる先で待ち構え、グリーン上は、入れることを信じて次のホールに向かって歩き出す。だから、米初優勝を決めた一打も見なかった。
その思いに応えるように、見事なバーディパットを次々沈めた最終日。母の姿はときどきギャラリーの中に見つけていた。「赤いバッグが目立つので」と、ひとみさんが持ち歩くカバンがトレードマーク。ホールアウト後は母子で勝利を喜んだ。
なにかと苦労が多いであろう海外転戦は、ケンカをすることもしょっちゅうある。「毎日、ちょっとしたことで怒られる」と古江は照れくさそうに笑ったが、誰よりも米初優勝を喜んでくれていることは分かっていた。一緒にゲン担ぎで毎日アイスクリームを食べてみたり、スコットランドで初優勝を祝ったり。「新しい経験ができているので、楽しめています」(古江)と、二人だから楽しめる。(スコットランド・アーヴィン/谷口愛純)
■ 谷口愛純(たにぐちあずみ) プロフィール
1992年生まれ。社会部記者、雑誌の営業その他諸々を経てGDOに入社。ゴルフは下手すぎて2017年に諦める。趣味は御朱印集めと髪色を変えること、頭皮を想って最近は控えてます。