男子並みパワー、クラブ変更、ウェアラブル端末…畑岡奈紗の進化の日々
◇米国女子◇DIOインプラントLAオープン 最終日(24日)◇ウィルシャーCC (カリフォルニア州)◇6447yd(パー71)
世界アマチュアランキング1位、今年の「マスターズ」に出場した中島啓太(日体大)は日々のトレーニングで、120kgのウェート設定でデッドリフト、スクワットを行うという。指導する栖原弘和トレーナーによれば、重量はナショナルチームでトップ。そしてこうも続ける。「畑岡奈紗は約110kgです」――。
2017年の米ツアー参戦から6年目。畑岡はゴルフコースの外でもストイックに体を鍛えてきた。腰を落ち着けてトレーニングに励むことへの難しさは、米国での転戦生活と日本国内での日常とは比にならないが、パワーアップに傾倒。それでいて本人はその重量設定だけを誇ろうとはしない。「どれだけ重いものを上げられても、体の動き、スイングにつなげられなければ意味がないんです。連動させないと」。目指すのはあくまで、ゴルファーとしてのナンバーワン。そのためのアプローチなら、どんなことにもトライしてきた。
今年2月、クラブセッティングを大幅に見直した。1W、1Wのシャフト、アイアンのシャフトにボール…。住友ゴムの担当者の助けを借り、約2年ぶりといえる刷新に着手した。
「替えなかったのはクラブについて自分が詳しくないという事情もありました」と畑岡は明かす。今季はインパクト前後での手先の動きを抑えたボディターンのスイングづくりを本格的に始めた。「身体もスイングも変わってきて、スイングへの考え方も昔とは違うのに、セッティングを変えてこなかった。『そりゃ、(以前のクラブは)合わないよね』というところもあったんです」。今季初勝利は、身体とスイング、クラブそのマッチングの最適解を導く取り組みの過程、まだ始まりの段階で手にした。
今、左手首には黒いバンドが巻いてある。数年前から欧米ツアーの選手たちの間でも流行中の「ウープ(WHOOP)ストラップ」に目を凝らすようになったのも最近のことだ。睡眠や休息、体力の量や質を計測する健康促進のためのウェアラブル端末。ショートゲームコーチのガレス・ラフルースキ氏に3月末、「シェブロン選手権」の会場でレッスンを受けている際にアドバイスをもらった。
「深く睡眠しないと、次の日に脳が働いていないから良い練習ができない、意味がないと。だから『きょうはしっかり練習する日』と、そうでない日を(睡眠の数値によって)考えている」とより効率的にスキルアップを図っている。
ちなみに、最終日はスタート前の練習から「緊張していた」。その様子は「心拍数もずっと高かった」とスマホに表示されるウープの数値でも顕著だった。また、端末が計測する肉体的な“回復状態”は「32%」と低調だったという。「80%以上なら悪くないんですけど。今週は月曜日が80で、それからは50%前後だった」と激動の1週間を振り返る。
23歳にしてすでに米ツアーの顔のひとりになったが、進化は止まらない。やるべきこと、やれることはまだ多く残されている。畑岡自身がそう信じてやまない。(カリフォルニア州ロサンゼルス/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw