2021年 東京五輪

銀メダルを導いた練習量 稲見萌寧が休まない理由

2021/08/08 18:54
日本勢初のメダルをもたらした稲見萌寧

東京五輪 女子最終日(7日)◇霞ヶ関CC東コース(埼玉県)◇女子6648yd(パー71)

「自分より上の人がいるのに、休んでいる場合じゃない」と稲見萌寧の口から聞いたのは、「センチュリー21レディス」(埼玉・石坂GC)でプロ初優勝を遂げた2019年7月のこと。

中学生の時により良い練習環境を求めて東京から千葉へと引越し、1日10時間の練習をこなすこともあった。周囲が練習を控える正月にも練習場に向かい、時にはインフルエンザになってもクラブを握り続けたという思い出もある。プロ1年目の2019年は前半戦の出場権しかなかったが、最終戦まで出続けて新人賞を受賞し、目標でもあった翌年のシードをつかんだ。

3年目の今年1月からは自宅近くのトレーニングジムを自ら探してトレーナーを増やし、キックボクシングを取り入れた。3月の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」では、稲見と同組でプレーした原英莉花から「自分もオフにトレーニングをしてきたつもりだけど、一目見ただけで努力の証しみたいな姿になっていて…思わず(自分の)キャディに『萌寧、すごいね』って話した」。努力も実り今年だけで5勝を挙げた。

圧倒的な練習量が稲見萌寧のプレーを支える

キックボクシングのトレーナー、平野洋平氏は「『可能であれば毎日やってください』と(稲見から)言われたけど、トレーニングは休むことも筋肉をつけるには大事なこと」。試合が続くなかでも毎週月曜日はジムに通い、欠かさずにトレーニングをする。「体はボロボロだけど休まない。言い換えると心配性なのかなとも思うけど、本人も完璧主義者と言っていて、そうなるにはトレーニングと練習しかない」

2019年5月末から体のケアを専門にサポートする小楠和寿氏は「普段の練習量が多かった分、今回の4日間の戦いでは大きかったんじゃないかな」と振り返る。酷暑に苦しむ選手が多かった中、「稲見に関してはそういう部分が見えなかった。普段からずっと練習を続けてきた地の体力が今回の銀メダルの要因にもなっているんじゃないかな」

左は2020年10月「スタンレーレディス」。右は21年「東京五輪」

コロナ禍で1年延期された東京五輪で日本代表選手枠を勝ち取り、日本ゴルフ界初のメダルを獲得した。得意とするプレーオフを制しての銀メダルに「人生で一番名誉なこと」と喜びつつ、「明日からきっちり練習します」と休む間もなく13日開幕の国内ツアー「NEC軽井沢72」(長野・軽井沢72G北コース)に臨む。この姿勢がメダルを獲得した理由なのかもしれない。(編集部・石井操)

■ 石井操(いしいみさお) プロフィール

1994年東京都生まれで、三姉妹の末っ子。2018年に大学を卒業し、GDOに入社した。大学でゴルフを本格的に始め、人さまに迷惑をかけないレベル。ただ、ボールではなくティを打つなどセンスは皆無。お酒は好きだが、飲み始めると食が進まないという不器用さがある。

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