2016年 ミヤギテレビ杯ダンロップ女子

規定に縛られ8連戦 イ・ボミは本当に大丈夫?

2016/09/26 15:11
現在6連戦中のイ・ボミ。疲れは否定できないが、休めない理由がある…

◇国内女子◇ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 最終日◇利府GC(宮城県)◇6551yd(パー72)

今大会で国内ツアー6連戦目となったイ・ボミ(韓国)は、最終日を「72」で回って通算3アンダーの19位。この連戦中、優勝・2位・3位のあとも3試合すべてでトップ20には入っている。だが、周囲の期待が格別高いのが昨季賞金女王の宿命だ。

「ショット的には良くなったけど、バーディチャンスについても入らなかったのが悔しい。パッティングの問題があると思う」と、イは申し訳なさそうに顔を曇らすばかりだった。

連戦の疲れは影響しているのか?と聞いた。「正直、疲れるのは疲れるけど…」と、うなずきながらも、「そう思ったらしんどくなるから、あまり考えないようにしている」と懸命に声を張った。しかし、そんなカラ元気もつかの間。「でも、ずっと成績が良くないから悲しいです…」と、いまにも消え入りそうな声で続けた。

話題を次週「日本女子オープン」の抱負へと変えた。イにとっては、答え慣れた定型の質問だろう。だが、「(今週の)成績は悪かったけど一生懸命やった結果だったので、来週も、もちろん…」まで言って、突然言葉を飲み込んだ。そして、ふーっと大きく息を吐いて間を取ったあと、諦めたような苦笑いとともに「…頑張っていきたいです」と続けた。“頑張る”という単語すら口ごもってしまうほど、常に“頑張っている”のに違いない。こんな疲弊したイは初めて見た気がした。

これだけ連戦を続けているのには理由がある。足かせとなっているのは、国内女子ツアーのトーナメント規定で定められた選手の出場義務だ。「優勝者の翌年度出場義務」と「シード選手2年連続欠場罰則」。前者はディフェンディングチャンピオンの翌年度大会への出場義務で、後者はシード選手が同一大会を2年続けて休むことを禁じている項目だ。ともに違反したら罰金100万円。だが、イにとっては罰金以上にルールを破ることへの抵抗が強いのだろう。

直近のイの参戦日程を見てみると、メジャー大会やディフェンディングチャンピオンの大会に挟まれるように、昨年出場しなかった大会が続いている。

1.「CAT Ladies(8/19-21)」→昨年欠場
2.「ニトリレディス(8/25-29)」→前年優勝者
3.「ゴルフ5レディス(9/2-4)」→前年優勝者
4.「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯(9/8-11)」→メジャー大会
5.「マンシングウェアレディス(9/16-18)」→契約メーカーの大会
6.「ミヤギテレビ杯女子オープン(9/23-25)」→昨年欠場
7.「日本女子オープン(9/29-10/2)」→メジャー大会
8.「スタンレーレディス(10/7-9)」→前年優勝者

上記で8連戦。その翌週の「富士通レディス」(10/14-16)で、ようやく誰にも気兼ねすることなく休むことができるのだ。

この状況をどう受け止めているのか?率直に本人に尋ねてみた。「もちろん、ディフェンディングチャンピオンは出た方がいいと思う。だけど、“2年(連続欠場罰則)”というのはスケジュールを組むのが難しい。でも、これまでずっとそれでやってきているから、私が『(規定が)悪いです』っていうのは失礼だと思う。みんなそれで頑張ってきたから、私もそれで頑張るしかないと思う…」。

大変なことは認めても、だからといって不平・不満は口にしない。韓国から日本に来て、いわゆる他国の土俵で戦っているイの意識の高さに、胸を打たれる思いがした。

今週の「日本女子オープン」は、プロアマ戦が火曜日に設定されている。「多分、あす(月曜日)も練習ラウンドをすると思う。予報は雨っていうけれど、コースを知らないので…」。月曜日、火曜日(プロアマ)とラウンドをして、水曜日は軽めの調整にするつもり。あと2試合でようやく休める…。イは今週も疲れた体にムチを打つ。(宮城県利府町/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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