29歳女子プロゴルファー・諸見里しのぶは今
今後の人生を考えて、ふと漠然とした不安や迷いに襲われたりする。誰しも1度は通る大事な関門だろう。特に30歳目前の女性は「29歳病」という呼び方もあるほどデリケートな年頃だ。若手が次々に飛び出し、女子ゴルフがブームになってから10年余り。中核を担った諸見里しのぶが、今年7月に29歳を迎え、そんな時期を過ごしている。
埼玉県の武蔵丘GCで開催されている「樋口久子 Pontaレディス」初日、諸見里は首位と2打差の2アンダー3位につけるスタートを切った。プロ転向を果たした2005年、当時19歳で出場した大会で2位に入ったコースだ。「あの時の記憶が強すぎて、良いイメージしか残っていない、10年前かぁ・・・」と流れた月日を懐かしみ笑顔で好感触を喜んだ。
鳴り物入りでのプロ転向から、順調にキャリアを積み、09年には年間6勝を挙げて賞金女王を争った(2位)実力者。以後、勝ち星から遠ざかり、同年のメジャー2勝で獲得した複数年シードが消滅した昨年は、今季の出場権を懸けたクオリファイにも出場。QTランク34位で今年の出場権を得たものの、完治不能と診断された肋軟骨のケガに悩まされるなど、苦しい状況が続いている。
「19歳から20歳になった時は、これまで制限されていたことが取っ払われて、大人の入り口に立ったというか、ワクワクした気持ちしかなかった」と10年前を思い返した。目前に迫った30歳をはるか遠くのことと見ていた当時は、この先の不安や迷いなど一切なかったと言う。
「30歳を目前にして、これから歩むべき道への決断や、これまで過ごしてきた10年間のやり方が正しかったかどうか?を考えるようになった。いまは不安のほうが大きいかも」。
予選落ちが続いた今シーズンの苦しい状況がもたらした産物は、“自分と向き合う”時間。トレーニングや練習だけでは拭い去ることのできない試練だった。
今季も賞金ランクは82位と沈み、決して好転しているとは言えない状況でも、下を向いてばかりではいられない。「30歳の誕生日迎えるまでに、胸を張って言える明確な目標をじっくり考えていきたい。先の人生において、正しい選択ができるような大人になりたい」。
世間に目を転じてみても、節目の30歳はやはり人生の岐路となることが多い。女性にとっては結婚の適齢期?という見方もある。諸見里自身も「10代の頃は、30歳になったらゴルフをやめよう」と、漠然とした結婚観の延長線で考えていたという。
「自分が苦しい時は、頼れる人を見つけて結婚しようなんて考えた時期もあった」
そんな苦悩の日々をケロリと明かし、「今は色々な在り方がある。同世代で活躍する選手もいるし、出産して戻ってくる選手だっている。ケガになんて負けていられない。もっとやれるって」と穏やかな顔で話した。迷い、悩みながらも、視界に明るい未来が見えているようだった。(埼玉県飯能市/糸井順子)
■ 糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール
某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。