小樽の難コースを選手はどう受け止めたのか 次は4日間大会!?
賞金女王レースを独走するイ・ボミ(韓国)が今季3勝目を挙げて幕を閉じた国内女子ツアー「ニトリレディス」は今年、北海道のゴルフ発祥の地とされる小樽カントリー倶楽部を舞台とした。1928年の開業当初は3ホールのゴルフコースとしてスタートし、現在は隣接する新旧の2コースを抱える。
1999年の国内男子メジャー「日本オープンゴルフ選手権」は激しい雨風の中の死闘となり、尾崎直道が制したが、優勝スコアは10オーバーという壮絶な試合だった。2004年から12年までは国内男子ツアー「サン・クロレラ クラシック」が開かれた。国内女子ツアーの開催は今回が初めてで、石狩湾に面し自然が最大の脅威となる難関の新コースで行われた。
今大会の18ホール平均ストローク数は75.1311で、5月のメジャー「ワールドレディスサロンパスカップ」の74.0425を上回った。決勝ラウンドに残った65選手中、アンダーパーで大会を終えたのは9人だけだ。
パー4ホールでは女子ツアーで4番目に距離の長い16番ホールは、447yd。最終日のグリーンの速さはスティンプメーター13.75フィートで、グリーン周りのラフは短く刈り込まれ、こぼれたボールは止まらない。最終日のみ異例の「バーディ賞」がかけられたが、該当者はいなかった。最終日の平均スコアは4.6269で、最も難度の高いホールとなった。
優勝したイは「本当に難しいコース。メジャー大会のつもりでプレーしていた」。開幕前の練習で初めてラウンドし、ビッグトーナメントを想定したコースマネジメントや気構えで本番に臨んで、初日から首位を堅守する完全優勝を果たした。
通算1アンダーの7位で終えた成田美寿々は闘争心をあおられるコースだったとし、2日目に「75」をたたいたにもかかわらず「今までプレーした中で一番好き」と評した。通算2オーバーの11位だった原江里菜も「難しいけどやりがいのあるコース。こういうところでプレーできる機会を増やしてほしい」と、最終日に「77」の手痛い仕打ちを受けながらも、前向きだった。
2日目に出場選手中、唯一のノーボギーでラウンドした吉田弓美子が「このコースでプレーできるのはプロゴルファーみょうりに尽きる。(良いスコアを出せば)自信にもなる」と話していたのも、印象的だ。
日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「ショットの良し悪しがそのまま(スコアに)表れる。“本物”のコースは、コースから選手にしっかりとフィードバックする状況に仕向けてくれる。だからどんなに痛い目にあっても、選手たちは『またやりたい!』と思ってくれるんだろう」と振り返った。
開幕の1カ月半以上前から“戦いの場”を作り上げてきた小樽CCを「コンディション作りの鑑(かがみ)」と賞賛。選手たちの声も自身の耳に届いており、大会について「できれば(メジャーと同じ)4日間競技、末はメジャー昇格も…」という構想もあるとか。
逆境こそが人を強くする、とはよく言ったものだ。困難な状況に置かれてこそ、発揮できる判断力もあるし、問題を解決しようとする能力がより高まることもある。経験が刺激となって、研さんを積む…その繰り返しが、選手を逞しくするのではないだろうか。
コースが選手の技(業=わざ)を磨く――。そんな試合はプレーする選手にも観戦する側にも、とてもエキサイティングだ。「もっと…」と期待してしまうのは、筆者だけではないようだ。(北海道小樽市/糸井順子)
■ 糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール
某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。