元女王・大山志保が“ありのままで”狙う通算14勝目
2006年の賞金女王・大山志保が、「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の2日目に5バーディを奪い、通算9アンダーの2位に浮上。昨季最終戦以来となる通算14勝目へ向け、意欲も新たに、最終日の逆転劇を虎視眈々と狙っている。
「あの頃のスイングが戻ってきたんですよ」。荒天による3時間あまりの中断で夕闇迫る中でのホールアウトとなった2日目、大山は目を輝かせて手ごたえを語り始めた。今度こそ本当、と信じて疑わない確信に満ちた口調だ。
賞金女王となった後、公傷制度を使って戦列を離れるなど、ひじ、背中、肩と故障が絶えず、歴戦で酷使してきた体や失ったフィーリングと向き合い続けている。「取り戻した」「掴んだ」と思った矢先に、蜃気楼をつかんだかのように自信が手からすり抜けていく。そんな想像を絶する苦悩の時間に、聞く側も思わず「今度こそ」とペンに力が入る。
「本当の意味で思い切り振ることは、どこかで怖がっていたんだと思うんですよね」と、大山は続けた。きっかけは今週水曜日朝の練習で湧いたフィーリングだった。その日は練習だけを行い、翌日のプロアマ戦からラウンドをする予定だったが、ドライビングレンジでボールを打った瞬間に「コースで試したい、って思ったんです」。「怖い」とも「怖がらない」とも思わず、以前のようにただ“ありのままで”スイングすることが、ふとできるようになっていたという。喜びいっぱいで自らの予定を変更し、すぐにコースで自分を解き放った。
結果は上々。翌日のプロアマ戦でも「6アンダーが出て、ショットでチャンスを作るゴルフが出来るようになったんです」とノリノリの状態で試合を迎えた。初日は5バーディを奪ったが「もっと振れる」。そして2日目は「朝から昨日よりもフィーリングが良かった」と、6バーディを奪うことに成功した。
ディズニーのアニメ映画『アナと雪の女王』の主題歌「Let it go」(レット・イット・ゴー)は、日本版では「ありのままで」と訳されて親しまれているが、英語本来の意味には「現状を受け入れ、気にしないで行こう」というニュアンスも含まれているという。苦難に向き合い続け、たどりついた37歳元賞金女王の“ありのままで”は、まさにそんな状況だ。
「やはり最終日最終組でプレッシャーはかかると思う。でも、その中でどういうスイングができるか、楽しみです」。本来の思い切りの良いスイングを取り戻した大山には、そのプレッシャーに立ち向かう覚悟と勇気がある。(長野県軽井沢町/本橋英治)