藍も実感! 美香の成長と将来への期待
宮里美香が、2位に7打差をつけて迎えた最終18番。3メートルのパーパットは惜しくも外れ、残り数センチ。まだ同組の上原彩子がパットを残していたが、何のためらいもなく、まったく自然に“お先”のウィニングパットをカップに沈めた。「だって、初めてだから分かりませんよー。だからギャラリーも“あーっ”って言ってたんだ」。なんとも美香らしい、初勝利の瞬間だった。
「新しい自分を作っていきたい」。美香が今週、繰り返し使っていた言葉だ。昨年大会では4打差をつけて最終日を迎えたものの、自滅により優勝を逃した。「去年は去年。もう忘れようとしています」。報道陣に対し、“もう聞かないで”という無言の訴えが聞こえてくるようだった。奇しくも、昨年と同じ2位に4打差のリードをつけて迎えた最終日。美香が米ツアーで培った、1年の成長が試される戦いだった。
1年前との違いを、次のように挙げる。「緊張感なくプレーできたことも大きいし、アグレッシブにできたのも大きい。平常心でできたのが変わったところだと思う」。すべては、自分に確かな自信を持てたことに起因する。「去年、アメリカツアーでトッププレーヤーを見て、“自分のショットにどれだけ自信を持ってるんだろう”と思った。(自分に)半信半疑じゃ戦えない」。これもメンタルコーチの指導、そして米ツアーでの経験の賜物だ。
18番グリーンサイドで見守っていた「お姉さん的な存在」と慕う宮里藍と抱き合い、「本当に良く頑張ったね」と声をかけられ、涙が溢れ出た。藍が明かす。「去年、(米ツアーの)最終戦が終わった時に“1年不安だった”と泣き出して。今年は自分のペースでできているし、一段ずつステップを上がっていると思う」。まずは、米ツアーでの初勝利を目標に掲げる美香。アメリカでも、藍が18番グリーンで美香を待つ光景が見られる日は遠くないのではないか。そんな期待を抱かせる4日間だった。(編集部:塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。