日本女子アマ覇者・飯島早織 人生ワースト「87」からの決意
◇国内女子◇ゴルフ5レディスプロゴルフトーナメント 2日目(2日)◇GOLF5カントリー美唄コース(北海道)◇6472yd(パー72)◇晴れ(観衆2127人)
初日のスコアカードには、15オーバー「87」と書き込んだ。それは今年6月の「日本女子アマ」を制した飯島早織(ルネサンス高)にとって、人生で初めての経験だった。「記憶にない。少なくとも、プレーヤーとして競技に出るようになってからは初めてです」。キャリアワーストのスコアが、この大事な週に出てしまった。
今大会は、プロキャディの進藤大典氏が主催した昨年11月「進藤大典 ジュニアトーナメント2022 Supported byアイダ設計」の優勝特典で出場した。それも、進藤氏自らがキャディを務めるという“豪華副賞”付きだ。
気合いを入れて臨んだ初日だったが、いきなりつまずいた。2ホール目の11番(パー5)で「10」をたたいた。12番をバーディとしたが、その後の6ホールはボギーが3個で、ダブルボギーも2個。ハーフ「47」をたたいた。
「自分ができる最低限より、もっともっと上のことをやろうとしてしまった」―。片山晋呉や谷原秀人、そして松山英樹。日本のトッププロたちのバッグを担いできたプロキャディに、今は自分のバッグを預けている。緊張しながらも良いところを見せようと、少し“背伸び”をしてしまった部分もあった。「できもしないのに、全部バーディを獲りにいこうとしてしまった。焦っちゃいました」と反省が口をつく。
「自分(のスコア)が悪いことで、進藤さんの顔に泥を塗ってしまったらどうしようと思った。推薦で出場して成績が悪かったら今後のジュニアの方々に迷惑をかけてしまうし、色々背負う部分がありました。自分で責任を負えないし、辛かったです」と唇をかみ締めた。
しかし「(ゴルフの)調子が悪かったわけではないので、逆に吹っ切れました。ここまでいくと清々しかったです」と持ち前の明るさですぐに顔を上げた。「もちろん反省はしたんですけど、後悔はしてないです。長くゴルフをやっていれば、こんな日もある。しょうがないと思って受け入れました」
初日のプレーを振り返り、進藤氏との作戦会議を経て臨んだ2日目は4バーディ、3ボギーの1アンダー「71」で、初日に比べて16打も縮めた。「失敗から学ぶことが多かったです。自分のことをちゃんと理解して攻め方をちゃんと組み立てて、今回学んだマネジメントを今後に生かしたいです」。通算14オーバーで予選落ちに終わったが、その表情は晴れやかだった。
今週、飯島のプレーを一番近くで見守った進藤氏は「才能あふれるというか、あれだけ精度の高いショットを打てる子は初めて見たので、感動を覚えました」と18歳を絶賛した。
「初日はスコアには直結しなかったですけど、2日目のアンダーパーは彼女の努力や向上心、全てが詰まったスコアだと思います。僕も、初日に良いスコアを出させてあげられなかったですし、反省点はたくさんあります」。43歳の進藤氏もまた、飯島から学んだ。「選手をリラックスさせられるようなキャディになりたいですね」と、この2日間の経験を自身の今後にも生かすつもりだ。
進藤氏は、飯島のプレースタイルに申ジエ(韓国)や青木瀬令奈を重ね、「日本一の精密機械」を目指してほしいと語る。「今の長所を伸ばしつつ、彼女の人柄が世に出るとファンがたくさん増えると思う。日本を代表する選手になってほしいですね」と熱いエールを送った。
飯島は今後、「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」(9月15日~/愛知・新南愛知CC美浜コース)と「日本女子オープン」(9月28日~/福井・芦原GC海コース)の2試合に出場し、10月31日からの最終プロテスト(岡山・JFE瀬戸内海GC)に挑む。
「今取り組んでいる課題が試合でできることが多くなってきているので、それをどんどん試して、自分の自信にしていきたい」と力強く決意を語った飯島。この「87」は、決して無駄にしない。(北海道美唄市/内山孝志朗)
■ 内山孝志朗(うちやまこうしろう) プロフィール
1995年、東京都生まれ。2018年に新卒でGDOに入社し、CS、ゴルフ場予約事業、練習場事業を経て編集部へ。学生時代は某男子プロゴルファーの試合を見るためだけに海外に行き、観光せずにゴルフ場とホテル間をひたすら往復していた。訪れた町を散策することが出張時の楽しみ。