「勝って見返す」 金田久美子が果たした心の誓い
◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 最終日(30日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6550yd(パー72)
金田久美子のインスタグラムには15万人を超えるフォロワーがいる。試合結果や練習動画といったプロゴルファーのSNSでは一般的なものだけでなく、オフのプライベートな過ごし方を紹介したり、ネイルなどこだわりのファッションに絡んだ投稿も少なくない。コロナ禍によりトーナメント会場での対面の交流に規制がかかって久しいだけに、ファンにとっては身近に感じられる貴重なツールとなっているかもしれない。
しかし、SNSでの積極的な発信は良いことばかりとはいかないのが現状だった。「ちょっとしたご飯の写真とか、オフの私服の写真を載せるだけで『そんなことしてるから…』『練習しろ』って結構すごい量が来るんです」。心ない言葉は、調子を落として悩んでいるときほど刃となって突き刺さってくる。「みんなが思っているほどメンタルも強くなくて…。でも、いつか勝って見返したいと思っていました」。2011年の初優勝を最後にタイトルから遠ざかり、17年末にシードを失った金田はコースの外でもひっそりと闘っていた。
「『こんな見た目』で全然練習してないんじゃないかって、SNSでも言われるけど…」。かつて“ギャルファー”と呼ばれることもあった33歳。アマチュアのときは嫌いだった練習も、プロになり、そのままでは生き残っていけない世界であることを十分すぎるほど思い知った。
最終日の前半7番、バンカーにつかまった。「得意だったバンカーが、ここ3年くらい苦手になってトップばかりしていた。数カ月間、バンカーの練習はみっちりやってきた」。もともと感覚を頼りにプレーしていたタイプで、左寄りにボールを置くことが一般的なバンカーショットも「私はずっと右だった」。スイングを変えていく過程でスタンスやボール位置を自分なりに模索してきたという。
「あれだけ練習してきたじゃん、ビビるな!」。バンカーに入れたくない一心で組み立てていた自分はもういなかった。1mに絡め、1パットのパーでピンチをしのいだ場面に少しだけ胸を張る。「ここ一番、絶対にうまく打たなきゃいけない場面で成果が出た。人から見たら“普通”のバンカーショットだったかもしれないけど、私は結構うれしかった」と笑顔でうなずいた。
勝って見返す――。11年189日ぶりの優勝で苦しかった日々の誓いを現実にできたのは、間違いなく地道な積み重ねがあったから。30日(日)の夜、インスタグラムでの2勝目報告には3万もの“いいね”がついた。(埼玉県飯能市/亀山泰宏)
■ 亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール
1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。